「ロシア国家の歴史」

2013年から刊行が開始された新シリーズ。ロシアの歴史をテーマとしてきたアクーニン氏の、集大成的なものになるようです。

全部で8巻の予定。中世からロシア革命まで、教科書的な歴史書と、その時代をテーマとした中編小説集の、2冊ずつセットで、順次出版されるらしい。

共産主義とか国粋主義とか、見る人によっていろいろな立場があるロシア史ですが、アクーニン氏は「イデオロギー抜き」の歴史書にしたい、と言っているみたいです。

タイトルも「ロシア史」ではなくあえて「ロシア国家の歴史」となっており、今のロシアという国が、「どういう起源で、どういう経緯で今の形になったか?」を明らかにしていきたい、ということのようです。

プーチン政権に批判的なアクーニン氏でありますから、「なんでロシアはヨーロッパになりきれずこんなに強権的なのか」というのが、問題意識なんでありましょう。

ともあれ、図版が豊富で、アクーニン作品でおなじみの画家イーゴリ・サク―ロフ氏によるイラストも多数収録されており、ロシア史に興味のある人には、なかなか良いシリーズではないかと思われます。

なお、小説パートの主要キャラは、9世紀から20世紀まで一族の系譜がずっとつながっているそうで、この一族の一大サーガにもなっているのだそうです。各小説に必ず、額に赤いアザみたいなのがある人物が出てきますが、それがこの一族の血をひいている証なのだとか。

作品リスト

No.題名原題刊行作品の舞台内容
1ヨーロッパの一部Часть европы 20139世紀・黎明期から、13世紀・モンゴル侵攻までの、ロシアの歴史。
2炎の指Огненный перст20139世紀、11世紀、13世紀中編小説集。「炎の指」「悪魔の唾」「クランベリー公爵」の三篇を収録。
3アジアの一部Часть Азии 20141223年-1462年モンゴル帝国に征服された後、再び独立するまでのロシアの歴史。
4ボッホとペテン師Бох и Шельма 201413世紀、14世紀中編小説集。「ズヴェズドゥーハ」と「ボッホとペテン師」の二篇を収録。
5アジアとヨーロッパの間Между Азией и Европой 20151462年-1605年15~17世紀・大帝と言われたイワン三世からイワン四世(雷帝)・ボリス・ゴドゥノフに至る、ロシアの歴史。
6寡婦の布Вдовий плат20161470年代、16世紀中編小説集。「寡婦の布」と「カインの印」の二篇を収録。
7ヨーロッパとアジアの間Между Европой и Азией201617世紀ボリス・ゴドゥノフ帝死後の動乱時代から、ロマノフ朝成立・ピョートル大帝登場の前夜まで。
8トリョフグラーズイの一週間Седмица Трехглазого201617世紀中編小説集。「トリョフグラーズイの一週間」と「子ヘビを殺す」の二篇を収録。
9アジア的な西欧化Азиатская Европеизация201717世紀ピョートル大帝の生涯と治世、ロシア帝国の成立について。
10クルミの仏様Ореховый Будда201818世紀日本の秘宝「クルミ仏像」を受け継いだ少女カテリーナが、日本の仏僧と旅をする。
11ユーラシアの帝国Евразийская империя201818世紀ピョートル大帝の死後、女帝時代から、エカテリーナ二世の息子パーヴェル一世の時代まで。
12ルーツィイ・カーチンの幸運な経験と考察Доброключения и рассуждения Луция Катина201918世紀賢い若者ルーツィイが、ドイツの小領邦やロシアで啓蒙主義的な国家の実現を目指す。
13最初の超大国Первая сверхдержава202019世紀ナポレオンと戦ったアレクサンドル一世と、反革命・反動圧制のニコライ一世の時代について。
14平和と戦争Мiр и Война20201812年 ナポレオン軍の侵攻を受けて、女地主のポリーナが財産を守ろうとフランス軍に立ち向かう。
15帝国への処方箋Лекарство для империи20211855-94年農奴を開放したアレクサンドル二世と、反動的になったアレクサンドル三世の時代について。
16キーテジへの道Дорога в Китеж20211854年、1874年、1880-1881年自由化と反動専制政治に揺れるロシアで、旧友の三人がそれぞれの政治的立場に立った人生を歩む。
17重く長い病の果てにПосле тяжелой продолжительной болезни. Время Николая II20211894年-1917年ニコライ二世の治世と、ついに革命による帝政崩壊まで。
18彼は去り際に尋ねたОн уходя спросил20221914年-1918年富豪の娘の誘拐事件を警察官僚グーセフが捜査する中で、ロシア帝国を揺るがす陰謀が明らかになる。
番外編1881188120231881年戯曲。皇帝アレクサンドル二世が革命派に暗殺された中で、ロシアの将来を決めた政治的決定の背景が描かれる。

更新履歴

2023/10/06 番外編 1881 を公開
2022/07/12 第十八巻 彼は去り際に尋ねた を公開
2022/02/28 第十七巻 重く長い病の果てに を公開
2021/08/13 第十六巻「キーテジへの道」 を公開
2021/06/06 第十五巻「帝国への処方箋」 を公開
2020/09/27 第十四巻「平和と戦争」 を公開
2020/02/13 第十三巻「最初の超大国」 を公開
2019/08/16 ルーツィイ・カーチンの幸運な経験と考察 を公開
2019/01/28 第十一巻「ユーラシアの帝国」 を公開
2018/06/22 第十巻「クルミの仏様」 を公開
2018/01/11 第九巻「アジア的な西欧化」 を公開
2017/06/22 第八巻「トリョフグラーズイの一週間」 を公開
2017/01/06 第七巻「ヨーロッパとアジアの間」 を公開
2016/04/06 第六巻「寡婦の布」 を公開
2016/02/18 第五巻「アジアとヨーロッパの間」 を公開
2015/01/30 第四巻「ボッホとペテン師」 を公開
2015/01/23 第三巻「アジアの一部」 を公開
2014/06/11 第二巻「炎の指」 を公開
2014/06/11 第一巻「ヨーロッパの一部」 を公開