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第十二巻 ルーツィイ・カーチンの幸運な経験と考察

小説パートの六作目。女帝エカテリーナ二世の啓蒙主義時代を舞台に、青年ルーツィイ・カーチンの波乱の生涯が描かれます。

この作品は啓蒙主義時代のロマン小説みたいなものをイメージした作風になっているらしいのですが、何か元ネタがあるんですかね。ストーリーは、特にすごい伏線やオチがあるわけではなく、アクーニン氏の作品にしては退屈な気がするのですが…もしかしたら、昔の何かの小説をなぞった展開になっているのかもしれません。

題名の「ルーツィイ・カーチンの幸運な経験と考察」というのは、主人公ルーツィイが後世への記録として書いていたノートみたいなやつのタイトルです。「幸運な経験(ロシア語でダブラクリュチェーニエ)」というのは、どうやら実際のロシア語にはない造語で、「この世に起こる出来事は、どんなに不幸であっても、それは人を成長させるための幸運な経験なのだ」という主人公ルーツィイの哲学的な思想を表しているとのことです。

その名の通り、ルーツィイの人生には次々に不幸が起こり、それを乗り越えて成長しても、またさらなる不幸が…という話ですが、うーんやっぱりオチがない気が。

登場人物

ルーツィイ・カーチン賢い青年。第十巻「クルミの仏様」に出てきたカテリーナとヤコブの息子。啓蒙主義の時代にあって、理想の社会を実現したいと考えている。
カール・ヨハンドイツの小領邦オーバーアンハルトの公爵。若くて情熱的。
ベッティーナ賢い娘。化粧とか恋愛とかには興味がない。
エカテリーナ二世ロシアの女帝。
コズリツキーエカテリーナの秘書。切れ者。権力闘争には関わらず、優雅に隠居したいと考えている。
コルジーニンルーツィイが赴任したシンビルスク州の軍司令官。
ポリーナコルジーニンの娘。最初は気恥ずかしがってルーツィイと目も合わさない。
アガープルーツィイが与えられた領地の村の悪党。片足が義足。

ストーリー

ルーツィイ・カーチンがドイツの小領邦オーバーアンハルトの改革を手伝う。

父母を亡くした青年ルーツィイは、ドイツに留学する。しかし途中で騙されて、プロイセン軍に入隊させられてしまう。

最前線に送られたルーツィイは、オーバーアンハルト領主の青年公爵カール・ヨハンの命を助ける。カール・ヨハンに取り立てられて、ルーツィイは大臣になり、オーバーアンハルトをこの世の楽園のような自由で進んだ国にするため、改革を手伝う。

さらにルーツィイは頭脳系女子のベッティーナに出会う。最初は恋愛に発展しなかったが、そのうち結婚することになる。

ルーツィイはエカテリーナ二世の治める古郷ロシアへ。

幸せな結婚生活は長く続かず、予防接種の失敗でベッティーナは若死にする。失意のルーツィイは、カール・ヨハンの勧めでロシアに帰国する。

女帝エカテリーナ二世によって、シンビルスク地方の代議員に任命されたルーツィイ。女帝の目指す啓蒙主義国家を実現するため、シンビルスクの田舎政治家たちの意識改革を目指す。

しかしロシアは旧態依然のままで、全く啓蒙主義にならない。失意のルーツィイはドイツに戻ろうとするが、その前に領地に出没する悪党アガープを退治しに行く。その途中で、田舎軍司令官の娘ポリーナといい感じになる。

いろいろあってポリーナと結ばれ、なんか結局幸せな感じになったルーツィイ。自分の領地で啓蒙改革を進める。領民もいい感じになってきたと思ったとき、ロシア全土を震撼させるプガチョフの農民反乱が発生して…。

挿絵集

アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。しかしそのまま載せると著作権侵害なので、それを参考にして、自分で描きなおしました。下手すぎて複製には当たらないでしょう。
!(^^)!

主人公のルーツィイ・カーチン。例によって額に点みたいなアザがある。
頭脳系女子のベッティーナ。見た目を飾らないタイプ。

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