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「ロシア国家の歴史」シリーズの、小説パート第三作。イワン三世の時代を描いた「寡婦の布」と、雷帝イワン四世の時代の「カインの印」の中編二作が収録されております。
表題作「寡婦の布」は、商業都市ノブゴロドが舞台。いにしえの町ノブゴロドは、民主的な自治を守り、商業が栄えた豊かな都市でした。
それを支配しようとするのが、専制国家ロシアを確立したモスクワ大公のイワン三世。イワン三世の版図拡大と、それに対抗するノブゴロド支配層の駆け引きが、作品の背景になっております。
第二話「カインの印」は、歴史に名高い暴君イワン雷帝が主人公。異常に信心深く、神を恐れるあまり、常軌を逸した行動に出る雷帝。
その内面が、一人称で語られております。
タイトルの「カインの印」というのは、聖書でアダムとイブの子供のカインが弟を殺し、人類史上初の殺人者となり、そのために神に印をつけられたとかいう話によるものらしい。
イワン三世 | 実在のモスクワ大公。大帝と呼ばれる有能な人物で、中央集権的ロシアの基礎を作った。 |
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ボリソフ | イワン三世の代官で、ノブゴロドに駐在している。 |
ナスターシヤ・グリゴリエヴァ | 商業都市ノブゴロドを支配する三婦人の一人。額にシミみたいな点があるが、寡婦の印の布をかぶって隠している。夫亡き後、冷徹非情になり、「石の女」と呼ばれる。 |
ユーリー | ナスターシヤの息子。知的障害がある。 |
アリョーナ | 気の強い娘。ユーリーの妻。 |
イゾーシム | ナスターシヤの部下。暗殺など、汚れ仕事をこなす。モスクワとの戦で顔に傷を負い、金属製のマスクをつけている。 |
ザハール | ナスターシヤの部下。モスクワの内情に詳しい。 |
マルファ | ノブゴロドを支配する三婦人の一人。「鉄の女」と呼ばれる権力者。 |
エフィーミヤ | ノブゴロドを支配する三婦人の一人。一見優しそうなので「絹の女」と呼ばれている。 |
商業が盛んで繁栄する都市ノブゴロドは、有力者の選挙で自治を維持する民主的な政体。影の実力者は、ナスターシヤら三人の婦人。
一方、勢力を拡大するモスクワ大公のイワン三世は、ノブゴロドを完全に支配しようとたくらむ。
イワン三世と連携したナスターシヤは、ノブゴロドの首長選挙で、三婦人の一人エフィーミヤと連携し、三婦人の一人で強敵のマルファを追い落とそうとする。
権謀術数で勝利は目前と思われた矢先、マルファはナスターシヤの息子ユーリーと嫁で妊婦のアリョーナを誘拐。流血沙汰を経て、マルファ一派が選挙に勝利する。
収まらないナスターシヤは、再起をかけてイワン三世と闇の取引をするが…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
大帝と言われるイワン三世。冷徹なまなざし。 | |
ナスターシヤの嫁のアリョーナ。気が強い。 | |
ノブゴロドの首長選挙を、影の支配者として見守るナスターシヤ。 |
イワン四世 | ロシア史に残る暴君、雷帝(グローズヌイ)と呼ばれています。親衛隊を使って多くの臣民を虐殺。異常に信心深く、晩年は精神を病んでいたという説も。 |
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スクラートフ | イワン雷帝の親衛隊(オプリーチニキ)の隊長。 |
コルニーリイ | イワンを批判して牢屋に入れられた修道士。 |
イリーナ・グリゴリエヴァ | 神父の父を殺して投獄された娘。額にシミみたいな点がある。 |
暴君イワン四世は、異常に信心深く、猜疑心が強い。やや精神的におかしい状態。悪夢や幻覚に悩まされる日々。
神を恐れ、ゆがんだ信仰から臣下を虐殺するイワン。だれも信用できないのでモスクワの宮廷を離れ、要塞のようなところに引きこもっている。
ある日イワンは、自分より罪深い罪人を見て、自分を慰めようとする。父殺しかつ聖職者殺しという大罪を犯した娘イリーナに会い、ある啓示を得るが…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
ロシア史に残る暴君イワン雷帝。 | |
父殺し・聖職者殺しの大罪を犯したイリーナ。 |