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ついに!「ロシア国家の歴史」シリーズの最終巻!ニコライ2世時代の、小説パートです。
2013年に刊行が始まってから、はや9年。1100年以上にわたる時の流れに沿って描かれた、大河小説シリーズも、ついにこれでラストです。感慨深い。
特に、今年の初めにはプーチン大統領がウクライナに突如侵攻し、しかも結構苦戦したりして、まだ戦争が続いており、いやはや時代の流れを感じます。
今回、ロシアへの経済制裁の影響で、ロシアの本を買うのもちょっと難しくなったのですが、なんとか読むことができました。
最近はなんかオチがなかったりわけわからんストーリーが多かった気がしますが、今回は、小説としてなかなか面白かったです。
ストーリーとしては、警察官僚のグーセフが、私立探偵のクール美女マリーと、富豪の娘の誘拐事件を捜査し、その過程で、ついにはロシア帝国を揺るがす巨大な陰謀にぶち当たる…というもの。
実直なグーセフの人柄が好感もてる。あと年齢も自分の一つ下の46歳で、なかなか中高年のわびしさが感じられて良い。最後もせつなくていい感じ。
なんしか、第一次世界大戦前夜~ロシア革命のとんでもなく激動の時代なので、そこそこ高位の警察官僚であるグーセフの運命も、なかなか悲しいものであります。
ただ、最終巻ということで、シリーズ全体でなんかオチがつくのかと思ってましたが、そういう感じではないようです。
もしかして、さらにスピンオフとか続編がある…?。
ところで、題名の「彼は去り際に尋ねた」というのは、ジェラール・ド・ネルヴァルとかいうフランスの詩人の一節で、死ぬ間際におっさんが「わしは何のために生まれてきたんやろか」と自問自答する、的なところから取られているみたいです。
グーセフ | 刑事事件担当の警察官僚。離婚した嫁に、最愛の娘を持ってかれた。実直で秩序を重んじる人物。 |
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マリー・ラル | ロシア系アメリカ人の私立探偵。クール美女で全く笑わない。第十六巻「キーテジへの道」で出てきたアドリアン・ラルツェフの娘です。 |
ベッティ | マリーのアシスタント。アメリカ娘で、サーカスの軽業師。 |
アレフチーナ | ロシアの火薬・マッチ工場のオーナーで、富豪の女性。気が強い。夫は変死。 |
ダーシャ | アレフチーナの娘。血液の難病を抱えているが、何者かに誘拐される。 |
ミラヴィードフ | 火薬のエンジニア。ボリシェヴィキの活動家で、誘拐の容疑者。結核で死にかけ。 |
クノップフ | ちょっと勇み足ぎみの刑事。 |
コンスタンチン・ヴォローニン | 警察の副長官的な高官。第十六巻「キーテジへの道」で出てきたヴィカの息子。 |
メングデン | アレフチーナが開いた小児クリニックの医師。ロシア皇后アレクサンドラが信奉する怪僧ラスプーチンと親しい。 |
ヴィドック | グーセフの愛犬。 |
ジボ | アレフチーナの親戚の悪党。 |
ククーハ | アレフチーナの義母。 |
1914年、警察官僚のグーセフは、国際警察会議で出会ったクールなアメリカ美女マリーと、富豪女アレフチーナの誘拐された娘を探すことになる。
工場の労働者を組織化するボルシェビキや、アレフチーナの親戚で悪党のジボ、アレフチーナと仲が悪い義母のククーハなど、疑わしい人物を捜査する。その過程で、グーセフはマリーに惚れる。
ついに真犯人らしき人物を突き止めるグーセフとマリー。しかしそこで、ロシア帝国を揺るがす巨大な陰謀の存在が明らかとなり…。