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「ロシア国家の歴史」シリーズの、小説パート第二作。13世紀、モンゴル侵攻の時代を舞台にした「ズヴェズドゥーハ」と、14世紀、1380年のクリコヴォの戦いを舞台にした「ボッホとペテン師」の中編二作が収録されております。
第一話の「ズヴェズドゥーハ」とは「星」のことで、もともとは主人公のモンゴル武将マヌールの愛馬の名前です。
マヌールの視点を中心に、圧倒的な戦闘力のモンゴル軍が、ロシア全土を征服していく時代が描かれております。
第二話の「ボッホとペテン師」は、「シェリマ(ペテン師)」というあだ名の主人公ヤコブが、大商人ボッホから財宝を盗み出そうとする話。
ロシアには「神はシェリマ(ペテン師)を見つける=悪事をはたらくといずれ見つかる」みたいなことわざがあるらしいのですが、ロシア語で「神」は「ボーフ」というので、この題名のボッホという人名は、それにかかっているのです。
機転のきく主人公のヤコブは、あらゆるピンチをとっさのウソで見事に切り抜けます。ロシアやキプチャク・ハン国など、広大な一帯を逃げ回り、なんとかボッホの追手をかわそうとします。
しかし、運命のいたずらで、ロシアVSモンゴルの一大決戦である、クリコヴォの戦いに巻き込まれることになります。
1380年のクリコヴォの戦いは、キプチャク・ハン国の将軍ママイと、モスクワ大公ドミトリー・ドンスコーイ率いるロシア軍が激突した、歴史に名高い大決戦。
無敵を誇ったモンゴル軍を、ロシアが本格的に破った、画期的な事件であったようです。
マヌール | モンゴル軍の十人隊長。中国やら中央アジアやらを転戦した、歴戦のつわもの。ズヴェズドゥーハ(星)という名前の愛馬に乗っている。勇猛な武将だが、誠実な人柄でもある。 |
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イングヴァーリ | モンゴルに最初に侵略されるロシアの領主。第二巻「炎の指」の第三話「クランベリー公爵」の主人公です。第二巻ではまだ若者だったが、今回は老人になっている。 |
フィーラ | イングヴァーリの娘。額に赤いシミみたいな点がある。 |
ソローニイ | フィーラの弟。17歳。 |
アガーピイ | 森に住む修道士。年代記を執筆している。 |
ゲレル・ノイオン | モンゴル軍の将軍。チンギス・ハーンの家系。 |
カルガ・セチェン | 老軍師。若いゲレル・ノイオンを補佐している。 |
モンゴルの武将マヌールは、モンゴル軍の先陣を切って、辺境の都市スヴィリスチェリを攻め滅ぼす。領主のイングヴァーリらを討ちとり、大将の命令で住民を皆殺しにする。領主イングヴァーリの娘フィーラは妻にする。
イングヴァーリの息子ソローニイは何とか脱出し、森をさまよう。モンゴル軍へ復讐するため、街道で単独行動のモンゴル兵を襲うようになる。
マヌールは戦功で百人隊長に出世する。マヌールの妻になったフィーラは、マヌールが誠実な人柄であると気づく。二人の間に、娘が生まれる。
妻子と穏やかに暮らしたい、と望むマヌール。しかし、新たな西方遠征への出動命令が下る。一方、ロシア全土が征服されても、モンゴルと戦い続けるソローニイ。やがて、二人の運命は交錯する…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
モンゴルの武将、マヌール。 | |
モンゴル軍の軍師カルガ・セチェン。物知り。 | |
モンゴル帝国との境にあるロシアの小邦スヴィリスチェリの領主、イングヴァーリ。第二巻に登場した時は、まだ若者でした。 | |
イングヴァーリの娘フィーラ。スヴィリスチェリが陥落し、モンゴル武将マヌールの妻となる。モンゴル女性の服装をしています。 | |
イングヴァーリの息子ソローニイ。父母の仇のモンゴル軍に復讐を誓う。 |
ヤコブ | ノブゴロドの住民。タタール系ロシア人で、額に赤いシミみたいな点がある。口がうまく、人をだまして生きている。雇い主のボッホに「シェリマ(ペテン師)」というあだ名をつけられた。 |
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ボッホ | ドイツの自由都市リューベックの豪商。通商キャラバンを率いて、中央アジアのキプチャク・ハン国へ向かう。 |
ガブリエル | ボッホの召使で、ボディーガード&殺し屋。 |
シャリフ・ムルザ | キプチャク・ハン国の高官。ボッホとは旧知の間柄。 |
グレーブ | ロシアの小邦タルーサの公爵。モスクワ大公ドミトリー・ドンスコーイに従い、モンゴル軍との対決に出陣する。 |
ステパニヤ | グレーブの婚約者の美女。 |
サローチン | グレーブと行動を共にしている、隣国リャザンの貴族。 |
頭の回転が速く口の達者なヤコブは、かつての雇い主ボッホに招かれて、キプチャク・ハン国への交易に同行する。ボッホは、最新の大砲と、宝石をちりばめた金ピカのベルトを贈り物にして、モンゴルの大将軍ママイに取り入ろうとする。
それを知ったヤコブは、大砲と金ピカベルトを盗んで逃走する。ボッホの殺し屋ガブリエルは、どこまでもヤコブを追いかける。
あちこちで危険に会うが、ウソ八百で乗り切るヤコブ。ロシアの公爵グレーブに捕まるが、大砲を提供して味方にする。しかし、それが裏目に出て、グレーブに連れられロシアVSモンゴル軍のクリコヴォの戦いに参加することになるが…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
ノブゴロドの住民ヤコブ。額の点の上に、「S」の文字の焼印を入れられている。 | |
リューベックの大商人ボッホ。 | |
ボッホの召使のガブリエル。 | |
ロシアの小領主グレーブと、婚約者のステパニヤ。 |