ブルーダ―シャフトのシリーズ

第一次世界大戦を背景に、ロシアとドイツのスパイが死闘を繰り広げる物語。「スメルチ・ナ・ブルーデルシャフト」、つまり、”ブルーダ―シャフト(もとはドイツ語で「友情」)による死”と題されております。

主要キャラは二人いて、ロシアの青年ロマノフと、そのライバルでドイツの情報将校フォン・テオフェルスです。

このシリーズは、「映画小説」というテーマで書かれています。つーても普通の小説なのですが、たくさんの挿絵があって、20世紀初頭の無声映画のような雰囲気を出しているというわけ。あと、シーンが変わる時に、無声映画の字幕みたいな文字が挿入されています。

挿絵は、アクーニン作品でおなじみの画家イーゴリ・サク―ロフ氏によるもの。スクリーンのような荒れた画像で、白黒映画の雰囲気が出ております。

なお、10本ある各作品(「第一幕」「第二幕」…と呼ばれている)は、それぞれ、別の映画ジャンル的な内容になっております。例えば、第一幕「幼児と悪魔」は「コメディー」、第二幕「破れた心の苦しみ」は「メロドラマ」etc...という感じで。

このへんは、アクーニン氏の別のシリーズ「ジャンル」のスタイルに似ておりますな。

ひとつの作品は中編くらいの長さで、単行本1冊に2話ずつ収録されております。

主要登場人物

アレクセイ・ロマノフサンクト・ペテルブルクで数学を学ぶ大学生。第一次世界大戦の勃発と、ちょっとした偶然から、ドイツ軍のスパイと戦うことになる。ロシア皇帝の一族と同じ苗字ですな。
ゼップ・フォン・テオフェルスドイツ軍の情報将校。ロシア軍に対し、様々なスパイ攻撃を仕掛ける。なお、苗字の「フォン・テオフェルス」から察するに、エラスト・ファンドーリンのシリーズニコラス・ファンドーリンのシリーズに出てくる、ファンドーリン一族と関係があるようです。ニコラスシリーズの各作品に描かれているように、ファンドーリンの先祖フォン・ドールン一族は、ドイツ・シュヴァーベン地方のテオフェルス城を領地としておりましたがゆえに。そんでもって、1941年が舞台の「ジャンル」シリーズ第二巻「スパイ小説」では、ドイツ軍防諜部門No.2の将軍として再登場します。

作品リスト

No.題名原題刊行作品の舞台内容
1幼児と悪魔Младенец и чёрт20071914年 サンクト・ペテルブルクロシア軍の配置計画書を奪おうとするフォン・テオフェルス大尉と、阻止しようとする学生ロマノフが対決。
2破れた心の苦しみМука разбитого сердца20071914年 中立国スイスの保養地サン・プラチード各国に情報を売るスイス人の極秘文書を、ロマノフらが奪取しようとする。
3空飛ぶ象Летающий слон20081915年 現エストニアの近くの空軍基地ロシア軍の大型爆撃機を破壊するため、テオフェルスが活躍。
4月の子供たちДети Луны20081915年 ペトログラード機密を盗もうとするドイツのスパイと、ロマノフが対決。
5奇妙な人Странный человек20091915年 ペトログラードロシアの将軍を失脚させるため、テオフェルスが怪僧ラスプーチンに接近。
6勝利の雷鳴とどろけ!Гром победы, раздавайся!20091916年 対オーストリア戦線ロシア軍の大作戦「ブルシーロフ攻勢」の秘密を守るため、ロマノフが活躍。
7"マリヤ"、マリヤ…≪Мария≫, Мария...20091916年 軍港セバストポリロシアの弩級戦艦 ”インペラトリーツァ・マリヤ” を破壊するため、テオフェルスが活躍。
8聖なるものなにもなしНичего святого20091916年 モギリョフのロシア軍大本営皇帝ニコライ二世を暗殺しようとするテオフェルスと、防ごうとするロマノフが対決。
9トランジット作戦Операция "Транзит"20111917年 スイスのチューリヒ革命家レーニンをロシアに送り込むため、テオフェルスが活躍。
10天使の大隊Батальон ангелов20111917年 東部戦線の最前線女性だけの志願兵部隊を、教官としてロマノフが指導する。

更新履歴

2012/03/22 第十幕「天使の大隊」 を公開
2012/03/17 第九幕「トランジット作戦」 を公開
2012/03/15 第八幕「聖なるもの何もなし」 を公開
2012/03/11 第七幕「"マリヤ"、マリヤ…」 を公開
2012/03/08 第六幕「勝利の雷鳴とどろけ!」 を公開
2012/03/05 第五幕「奇妙な人」 を公開
2012/02/29 第四幕「月の子供たち」 を公開
2012/02/23 第三幕「空飛ぶ象」 を公開
2012/02/21 第二幕「破れた心の苦しみ」 を公開
2012/02/16 第一幕「幼児と悪魔」 を公開