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この作品は、「飛行冒険物語」。ロシア軍が世界に先駆けて開発した、四発大型爆撃機”イリヤー・ムーロメツ”の配備を妨害するため、ドイツのスパイ フォン・テオフェルスが活躍します。ロマノフは出てきません。
「イリヤー・ムーロメツ」というのは、伝承に出てくる勇者みたいなものらしい。軍用機にこんな名前をつけるところが、帝政ロシアっぽいですね。
いろんな面でヨーロッパ列強に後れをとっていたロシア軍ですが、天才設計者シコルスキーの力で、世界初の大型爆撃機を生み出したそうです。こういうアンバランスなところも、ロシア帝国っぽいですな。
対ロシアの大規模攻勢を計画中のドイツは、こんなものをたくさん配備されてはたまらん。というわけで、テオフェルスに妨害工作の命令が下ります。
下手に爆破とかすると、「ドイツ軍は爆撃機を恐れている」というのがロシア軍にばれてしまうので、妨害には工夫が必要。
テオフェルスは、ちょうど予定されていた、ロシア軍最高司令官ニコライ大公の視察に合わせて、一計を案じます。
フォン・テオフェルス以外の登場人物たち。
ティモ | テオフェルスの従僕。苗字はグルーバーだと、この作品で明らかになりました。どうでもいい情報ですが。 |
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クルイロフ大佐 | 特別飛行隊の隊長。気さくな人物。 |
ルトコフスキー 二等大尉 | 四発大型爆撃機”イリヤー・ムーロメツ”の機長。 |
ルーチコ中尉 | イリヤー・ムーロメツの機銃手。 |
シュミット | イリヤー・ムーロメツの副操縦士。若くて未経験。詩人のアレクサンドル・ブロークを愛読している。 |
ステプキン | イリヤー・ムーロメツの整備士。 |
ゾーシャ | ステプキンの恋人。ポーランド娘。 |
スィチ | 飛行場の下士官。酒飲み。 |
クラエンコ将軍 | ロシアの将軍。大型爆撃機よりも、飛行船の方が、役に立つと考えている。 |
ボウル将軍 | ロシアの将軍。大型爆撃機よりも、小型の戦闘攻撃機の方が、役に立つと考えている。 |
フォン・マック将軍 | ドイツの将軍。ロシアへの攻勢を指揮する。ロシアにも親戚がいるらしいが、それはもしや、エラスト・ファンドーリンのシリーズ第十一巻「軟玉の数珠」の「木端の人生から」に出てきたフォン・マック一家でしょうか。 |
ネタバレにならない程度に解説。
ドイツ軍は、対ロシアの攻勢を控え、ロシアの新型巨大爆撃機”イリヤー・ムーロメツ”の配備妨害を決定。ロシアに潜入中のテオフェルスに命令が下る。
パイロットの経験もあるテオフェルスは、志願兵のふりして、クルイロフ大佐の飛行隊に潜入。ムーロメツの搭乗員たちに接近をはかる。
搭乗員の誰かを始末して、自分が代わりにメンバーに入ろうとするが、いまいち失敗。従僕のティモも、下士官を飲ませて潜入しようとするが、ちょっとした偶然で失敗。
しかし、整備士ステプキンの恋人ゾーシャを、誘惑することに成功する。
テオフェルスは、最高司令官ニコライ大公の視察時に、ムーロメツに散々な失態を演じさせようと計画。ねらいは、ロシア軍首脳が「こんな飛行機、役に立たないから、量産すんのやめよう」と判断すること。
ということで、誘惑したゾーシャを使って、巧妙なトリックを仕掛けるが…。
無声映画の雰囲気を出すため、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
ドイツ軍の前に姿を現した、怪物イリヤー・ムーロメツ。 | |
皇帝ヴィルヘルム二世を前にした、ドイツ軍の作戦会議。脅威となるロシア軍の巨人機を、なんとかすることに決定。 | |
クラエンコ将軍とボウル将軍が、ムーロメツを視察。二人とも、大型爆撃機の量産には否定的。 | |
飛行隊に潜入したフォン・テオフェルス。ムーロメツ機長のルトコフスキー大尉に接近。 | |
機銃手のルーチコに、病原菌入りコニャックを飲ませようとする。 | |
副操縦士のシュミットと、詩について語るテオフェルス。 | |
テオフェルスの計略により、総司令官の閲兵という大事な場で、ムーロメツに大火事が発生。 |
このシリーズには、「クロニクル」として、巻末に、当時の歴史写真がついています。
ロシア軍が世界に先駆けて配備した、四発大型爆撃機イリヤー・ムーロメツ。こんなのが本当に飛ぶとは驚きー。 | |
ムーロメツの開発者シコルスキー(真ん中の人物)。ロシア革命後はアメリカに亡命し、ヘリコプターなどを開発したそうです。 | |
作品中でムーロメツを観閲する、ロシア軍総司令官ニコライ大公(左)。2mの長身。足が長すぎですね。右は皇帝ニコライ二世。 | |
離陸準備完了のムーロメツ。しかしでかい。 | |
離陸ー。 |