TOP >ブルーダ―シャフトのシリーズ >聖なるもの何もなし
第一幕の後、それぞれに活動していたロマノフとフォン・テオフェルスですが、この作品で、再び直接対決。第一幕ではウブ青年だったロマノフも、今や凄腕の冷血諜報員になっとります。
作品の副題としては「ドイツの非道な計画」となってますが、すでにこれはジャンル名ではありませんね。副題の趣旨が、変わってきとる。
それで副題の通り、テオフェルスがロシア皇帝ニコライ二世を暗殺しようとし、ロマノフがそれを防ぐ、という展開。
タイトルの「聖なるもの何もなし」というのは、たぶん「汚い手段でもなんでもあり」という意味だと思われます。決まり文句っぽいが、辞書には載っていませんね。
他の作品に比べて、だいぶ長い分量になっております。メインキャラ二人が、直接対決するからでしょうか。
ロマノフとテオフェルス以外の登場人物たち。
コズロフスキー公爵 | おなじみキャラ。中佐で、ロシア軍防諜部門のキーマン。 |
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ナジモフ大佐 | 宮殿警察隊の指揮官。皇帝ニコライ二世の保安責任者。皇帝の大本営は、モギリョフの鉄道駅に置かれた、専用客車に設置されている。 |
スサーリン | 元ジャーナリスト。皇帝のプレス担当として、報道発表の文章を書いたりしている。 |
ドゥボフスキー将軍 | 皇帝の日誌記録係の老人。実質は、皇帝の話し相手。 |
フォン・シュテルンベルグ男爵 | 皇帝官房の補佐官。もろにドイツ系の名前。 |
タチヤナ・アジンツォーヴァ | アレクサンドラ皇后の友人の女性。ニコライ二世が、宮殿を離れた大本営でよろしくやっているか、監視するために派遣された。 |
フョードル | 大本営となっている、お召し列車の召使。 |
ティモ | おなじみ、テオフェルスの従僕。 |
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バラグール | 第七幕にも出てきた、テオフェルスの協力者。 |
ヴュン | 同じく第七幕にも出てきた、身軽な中国人。 |
”ヴォーラン” | テオフェルスの協力者。ロシア人のアナーキスト(無政府主義者)。ヴォーランというのはワタリガラスのことです。 |
”フィン” | テオフェルスの協力者。フィンランドの独立主義者。フィンランドは、当時ロシア帝国の一部だったらしい。 |
”マッカヴェイ” | テオフェルスの協力者でユダヤ人。 |
”クミチッツ” | テオフェルスに協力するポーランド人。ポーランドも、当時はロシア帝国の一部だったらしい。 |
”チューブ” | テオフェルスに協力する、ウクライナの独立主義者。チューブというのは、髪の房のことらしい。あだ名に反して、頭はつるつる。 |
ネタバレにならない程度に解説。
ドイツ皇帝には内緒で、ドイツ軍はニコライ二世の暗殺計画を発動。テオフェルスが指揮官に選ばれる。
テオフェルスは、手下のバラグールやヴュンの他に、革命家や独立主義者たちを集める。列車事故に見せかけて、暗殺を実行しようとする。
一方、ロマノフは、皇帝警護隊長ナジモフ大佐の依頼をうける。列車の大本営で生活している皇帝の、セキュリティをチェックしてほしいという。
列車大本営のあるモギリョフにやって来たロマノフ。皇帝の周りには、ドゥボフスキー将軍や報道官スサーリン、補佐官のシュテルンベルクなどがいる。
さらに、皇后の友人アジンツォーヴァ嬢とも知り合う。「嬢」と言っても、おそらくアラフォー。
いろいろ調査しているうちに、ロマノフは、列車内に内通者がいることを突き止める。列車から投げられた通信文を押収し、テオフェルスの一味ヴォーランをとっ捕まえる。
ニコライ二世は、南西戦線の視察に出ることになる。テオフェルスは、そのタイミングを狙うべく、事故らせる計画を発動する。
ナジモフ大佐とロマノフは、内通者を捜索する。どうもシュテルンベルク男爵が怪しいので、とっ捕まえる。シュテルンベルクの背後を洗うため、電報が飛び交う。そこで、ロマノフは新たな事実を発見する。
と言ってる間に、列車はテオフェルスのしかけポイントに到達。しかけたニセのボルトが壊れて、線路が外れる。
脱線して、大事故ボッカーンとなる皇帝列車。はたして皆の運命は…。
無声映画の雰囲気を出すため、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
コズロフスキー公爵(左)の友人、ナジモフ大佐。皇帝の警護隊長。 | |
皇帝お召し列車のセキュリティを、チェックするロマノフ。どっちに皇帝がいるか分からないようにするため、そっくりな二本の列車で構成されている。 | |
ニコライ二世の話し相手、ドゥボフスキー将軍。後ろで給仕しているのは、宮廷の召使フョードル。 | |
プレス担当のスサーリン。 | |
官房の補佐官フォン・シュテルンベルグ男爵。 | |
アレクサンドラ皇后に派遣されたお目付け役、アジンツォーヴァ嬢。30代後半と思われますが、独身。看護婦の格好をしています。ロマノフとお茶中。 | |
鉄道事故に見せかけて、ニコライ二世を殺害しようと計画する、フォン・テオフェルス。鉄道員の格好をしています。 | |
従員とコニャックを飲みながらくつろぐ、ロシア皇帝ニコライ二世(右)。手前で居眠りしているのは、ドゥボフスキー。 |
このシリーズには、「クロニクル」として、巻末に、当時の歴史写真がついています。
ニコライ二世の列車大本営が置かれた、モギリョフの駅。 | |
お召し列車の客車。 | |
車内のニコライ二世。 | |
列車の、皇帝の書斎と食堂。 |