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第八幕 聖なるもの何もなし

第一幕の後、それぞれに活動していたロマノフとフォン・テオフェルスですが、この作品で、再び直接対決。第一幕ではウブ青年だったロマノフも、今や凄腕の冷血諜報員になっとります。

作品の副題としては「ドイツの非道な計画」となってますが、すでにこれはジャンル名ではありませんね。副題の趣旨が、変わってきとる。

それで副題の通り、テオフェルスがロシア皇帝ニコライ二世を暗殺しようとし、ロマノフがそれを防ぐ、という展開。

タイトルの「聖なるもの何もなし」というのは、たぶん「汚い手段でもなんでもあり」という意味だと思われます。決まり文句っぽいが、辞書には載っていませんね。

他の作品に比べて、だいぶ長い分量になっております。メインキャラ二人が、直接対決するからでしょうか。

登場人物

ロマノフとテオフェルス以外の登場人物たち。

ロシア側

コズロフスキー公爵おなじみキャラ。中佐で、ロシア軍防諜部門のキーマン。
ナジモフ大佐宮殿警察隊の指揮官。皇帝ニコライ二世の保安責任者。皇帝の大本営は、モギリョフの鉄道駅に置かれた、専用客車に設置されている。
スサーリン元ジャーナリスト。皇帝のプレス担当として、報道発表の文章を書いたりしている。
ドゥボフスキー将軍皇帝の日誌記録係の老人。実質は、皇帝の話し相手。
フォン・シュテルンベルグ男爵皇帝官房の補佐官。もろにドイツ系の名前。
タチヤナ・アジンツォーヴァアレクサンドラ皇后の友人の女性。ニコライ二世が、宮殿を離れた大本営でよろしくやっているか、監視するために派遣された。
フョードル大本営となっている、お召し列車の召使。

ドイツ側

ティモおなじみ、テオフェルスの従僕。
バラグール第七幕にも出てきた、テオフェルスの協力者。
ヴュン同じく第七幕にも出てきた、身軽な中国人。
”ヴォーラン”テオフェルスの協力者。ロシア人のアナーキスト(無政府主義者)。ヴォーランというのはワタリガラスのことです。
”フィン”テオフェルスの協力者。フィンランドの独立主義者。フィンランドは、当時ロシア帝国の一部だったらしい。
”マッカヴェイ”テオフェルスの協力者でユダヤ人。
”クミチッツ”テオフェルスに協力するポーランド人。ポーランドも、当時はロシア帝国の一部だったらしい。
”チューブ”テオフェルスに協力する、ウクライナの独立主義者。チューブというのは、髪の房のことらしい。あだ名に反して、頭はつるつる。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

フォン・テオフェルスに、ニコライ二世暗殺命令が。

ドイツ皇帝には内緒で、ドイツ軍はニコライ二世の暗殺計画を発動。テオフェルスが指揮官に選ばれる。

テオフェルスは、手下のバラグールやヴュンの他に、革命家や独立主義者たちを集める。列車事故に見せかけて、暗殺を実行しようとする。

一方、ロマノフは、皇帝警護隊長ナジモフ大佐の依頼をうける。列車の大本営で生活している皇帝の、セキュリティをチェックしてほしいという。

皇帝の周囲に、内通者が潜入。

列車大本営のあるモギリョフにやって来たロマノフ。皇帝の周りには、ドゥボフスキー将軍や報道官スサーリン、補佐官のシュテルンベルクなどがいる。

さらに、皇后の友人アジンツォーヴァ嬢とも知り合う。「嬢」と言っても、おそらくアラフォー。

いろいろ調査しているうちに、ロマノフは、列車内に内通者がいることを突き止める。列車から投げられた通信文を押収し、テオフェルスの一味ヴォーランをとっ捕まえる。

ついに計画実行へ。

ニコライ二世は、南西戦線の視察に出ることになる。テオフェルスは、そのタイミングを狙うべく、事故らせる計画を発動する。

ナジモフ大佐とロマノフは、内通者を捜索する。どうもシュテルンベルク男爵が怪しいので、とっ捕まえる。シュテルンベルクの背後を洗うため、電報が飛び交う。そこで、ロマノフは新たな事実を発見する。

と言ってる間に、列車はテオフェルスのしかけポイントに到達。しかけたニセのボルトが壊れて、線路が外れる。

脱線して、大事故ボッカーンとなる皇帝列車。はたして皆の運命は…。

挿絵集

無声映画の雰囲気を出すため、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。

コズロフスキー公爵(左)の友人、ナジモフ大佐。皇帝の警護隊長。
皇帝お召し列車のセキュリティを、チェックするロマノフ。どっちに皇帝がいるか分からないようにするため、そっくりな二本の列車で構成されている。
ニコライ二世の話し相手、ドゥボフスキー将軍。後ろで給仕しているのは、宮廷の召使フョードル。
プレス担当のスサーリン。
官房の補佐官フォン・シュテルンベルグ男爵。
アレクサンドラ皇后に派遣されたお目付け役、アジンツォーヴァ嬢。30代後半と思われますが、独身。看護婦の格好をしています。ロマノフとお茶中。
鉄道事故に見せかけて、ニコライ二世を殺害しようと計画する、フォン・テオフェルス。鉄道員の格好をしています。
従員とコニャックを飲みながらくつろぐ、ロシア皇帝ニコライ二世(右)。手前で居眠りしているのは、ドゥボフスキー。

写真集

このシリーズには、「クロニクル」として、巻末に、当時の歴史写真がついています。

ニコライ二世の列車大本営が置かれた、モギリョフの駅。
お召し列車の客車。
車内のニコライ二世。
列車の、皇帝の書斎と食堂。

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