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第五幕 奇妙な人

この作品は「神秘主義」ということなんですが、帝政ロシア末期に実在した、怪僧ラスプーチン(らしき人物)が出てきます。

題名の「奇妙な人(ストランヌイ・チラヴェーク)」というのは、ラスプーチンのことでしょう。辞書によると、この言葉には、ほかに「巡礼者/遍路者」的な意味もあるそうです。

今回は、ロシア軍防諜部隊の司令官ジュコーフスキー将軍を、失脚させるのがミッション。少佐に昇進したフォン・テオフェルスが、ふたたびロシアの首都ペトログラードに潜入します。

当初は、将軍をおとしめる文書をでっちあげる計画。しかし失敗して、かわりに怪僧ラスプーチン(らしき人物)を利用することになります。

ラスプーチンっつうのは、シベリア生まれの自称修道士で、予言とか祈祷とかで、上流婦人たちに人気のあった人物。いまでもよくあるスピリチュアル屋さんですね。

ロシア皇后のアレクサンドラも、皇太子の血友病が改善したとかで、ぞっこん心酔してしまう始末。ちまたでは、ラスプーチンと皇后だの婦人だのがいかがわしい関係にあるとか噂され、おまけに皇后はもともと敵国のドイツ出身で不人気だったこともあり、ロマノフ朝の威信を大いに傷つけたのであります。

登場人物

フォン・テオフェルス以外の登場人物たち。

ティモおなじみ、テオフェルスの従僕。
ヴェレイスカヤ公爵夫人ロシアの愛国おばさん。戦争勃発時にドイツの避暑地にいたため、ドイツから出られなくなった。ロシア軍ジュコーフスキー将軍の妻のいとこ。
ジナイーダヴェレイスカヤの侍女。同じくドイツで拘束された。
ジュコーフスキー将軍おなじみ、ロシア軍 防諜部門の司令官。やり手。
”巡礼者”上流階級で人気の、神がかりのおっさん。名指しされていませんが、実在の人物ラスプーチンのことでしょう。
マリヤ・プロコフィエブナ「巡礼者」の家政婦。秘書&愛人的でもある。
ザイツェヴィッチ帝国議会の議員で、「巡礼者」をにがにがしく思っている。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

ジュコーフスキー将軍の失脚作戦がスタート。

フォン・テオフェルスに新たな任務が下る。ターゲットは、敵ロシア軍の防諜部門司令官ジュコーフスキー将軍。

やりての将軍が敵にいると何かと不都合なので、不正行為を暴く書類をでっちあげ、失脚させることにする。

うまく接近するため、ドイツに拘束されていた、将軍の親戚ヴェレイスカヤ侯爵夫人を利用する。テオフェルスとティモは、捕虜のロシア将校を装って、侯爵夫人を助け、ロシアに潜入する。

計画変更して、「巡礼者」に接近。

テオフェルスは首尾よくジュコーフスキーに面会するが、用心深い将軍のために、計画は失敗。その矢先、上流階級で人気の神がかりおっさん「巡礼者」に出会う。

企業家に扮したテオフェルスは、「巡礼者」に近づくことに成功。彼を通じてロシア宮廷に働きかけ、ジュコーフスキーを失脚させようとする。

そんな中、テオフェルスに惚れたヴェレイスカヤが乱入して、話がややこしくなる。しかたなく、テオフェルスらはヴェレイスカヤを始末する。哀れ…。

誘拐される「巡礼者」。そのときテオフェルスは…。

テオフェルスの策略で、「巡礼者」はジュコーフスキーを恐れるようになる。そんな中、久しぶりに、宮廷から「巡礼者」にお呼びがかかる。

皇太子の病状がまた良くないので、祈祷が必要だという。

宮廷から派遣された車に乗り込む「巡礼者」。しかし、車の将校たちは、突然、彼に襲いかかる。「巡礼者」の危機に、テオフェルスは車で後を追うが…。

挿絵集

無声映画の雰囲気を出すため、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。

フォン・テオフェルスの出陣を見送る、妻と息子。息子は、ぐずったのでテオフェルスにひっぱたかれ、鼻血を出している。体罰はいけません。
ドイツに拘束されたヴェレイスカヤ公爵夫人を、ボートで密出国させるテオフェルス。公爵夫人は、すっかりホの字になってます。後ろでは、侍女のジナイーダも、ティモにくっついとる。
ロシアのジュコーフスキー将軍に接近するため、ヴェレイスカヤをたらしこむテオフェルス。悪い男や。
公爵夫人のサロンに現れた、神がかりおっさん「巡礼者」。
作戦変更したテオフェルスは、ティモを病人にしたてて、「巡礼者」に近づく。
「巡礼者」は、対立する議員ザイツェヴィッチが「舌を突き出してくたばる」だろうと予言する。
作戦の邪魔になってきたヴェレイスカヤ一同を、事故死させるテオフェルスたち。非情や。
ツァールスコエ・セローの宮殿から、呼び出しを受ける「巡礼者」。幼い皇太子アレクセイの血友病を癒せるのは、彼だけなのです。

写真集

このシリーズには、「クロニクル」として、巻末に、当時の歴史写真がついています。

ドイツの大本営が置かれたプレス城。えらく優雅ですな。
神がかりの自称修道士グレゴリー・ラスプーチン。皇后をはじめ、上流階級に信者(特に女性)がたくさんいたそうな。誇張されて言われているほど、政治的な影響力はなかったそうですが。

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