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今回は「海事エピソード」ということで、フォン・テオフェルスが、ロシアの戦艦「インペラトリーツァ・マリヤ(皇后マリヤ)」の破壊工作に活躍します。
インペラトリーツァ・マリヤというのは、黒海に配備されてトルコ海軍を脅かした弩級(ドレッドノート級)戦艦だそうな。1916年10月に、謎の爆発事故を起こして、転覆だか沈没だかしたらしい。
この爆発が、テオフェルスのしわざだった、ということになっているのであります。
作戦の内容は、艦長の娘をたらしこんで爆弾を仕掛けるだけなので、あまりひねりがありません。
せっかく海が舞台なんだから、もっといろいろ出来事があっても良かったんですがね。
まあ、船のこととか、リサーチが大変だったのかもしれません。
フォン・テオフェルス以外の登場人物たち。
ティモ | おなじみ、テオフェルスの従僕。 |
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ツィンマーマン将軍 | ドイツ軍諜報部門の司令官。あだ名は「片眼鏡」。第五幕にも出てきましたが、この作品で初めて、苗字がツィンマーマンだと明らかになった。 |
マーシャ・コゼリツォーヴァ | セバストポリに住む娘。マーシャはマリヤの愛称です。顔の右半分に、大きなあざがある。父親は、戦艦「インペラトリーツァ・マリヤ」の艦長。 |
ミーカ・ヴォズネセンスキー | マーシャの幼馴染。と言っても、彼女と恋仲ではなくて、別に婚約者がいる。 |
ガラジェツキー中佐 | 「インペラトリーツァ・マリヤ」の副長。 |
バラグール | テオフェルスの協力者。もと盗人。 |
ヴュン | テオフェルスの協力者。身軽な中国人。 |
ネタバレにならない程度に解説。
ロシアは黒海に新型戦艦を配備し、トルコ経由のドイツの補給線を圧迫。ということで、テオフェルスに戦艦の破壊工作が命じられる。いうても相手は戦艦だし、かなり無茶な命令ですな。
テオフェルスは、軍港セバストポリへ。偶然「マリヤ」艦長の娘マーシャに出会い、顔にあざがあるコンプレックスにつけこんで、誘惑する。
マーシャにプロポーズしたテオフェルスは、父の艦長や、「マリヤ」の士官たちに近づく。
テオフェルスは、対空機銃のエンジニアのふりして、戦艦マリヤに潜入する。ちょっとガードが甘すぎるぞロシア海軍。
作戦のために、協力者のバラグールと、身軽な中国人ヴュンを呼び寄せる。ヴュンは、超人的な身のこなしで、見事「マリヤ」の内部へ侵入する。
そしてあまりひねりはなく、シンプルな展開。悲恋のマーシャの運命は…?
無声映画の雰囲気を出すため、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
セバストポリ軍港に停泊する、新型弩級戦艦「インペラトリーツァ・マリヤ」。 | |
マーシャと、幼馴染のミーカ。顔の右側に大きなあざのあるマーシャは、父親かミーカとしか外出しない。悲しいですな。 | |
自分も顔にやけどのあるふりをして、マーシャを誘惑するテオフェルス。任務とはいえ、悪い男や。 | |
出会って3日で、マーシャにプロポーズしたテオフェルス。父である、「インペラトリーツァ・マリヤ」艦長に近づくことに成功。 | |
ジェット・リーみたいな中国人ヴュン。 | |
ヴュンは、身軽さを生かして、「インペラトリーツァ・マリヤ」艦内に潜入。 |
このシリーズには、「クロニクル」として、巻末に、当時の歴史写真がついています。
黒海艦隊の戦艦インペラトリーツァ・マリヤ。 | |
軍港セバストポリの大通り。 | |
同じくセバストポリ。なんかの名所だと思いますが。 | |
陸軍将校を招いて、艦上での食事会。 | |
こちらは敵のトルコ戦艦。といっても、もとはドイツ海軍の「ゲーベン」号です。この艦はいろいろ因縁があって、トルコが参戦する原因になっていたりするが、そのへんの事情は、バーバラ・タックマンの『八月の砲声』に詳しく書かれております。 |