TOP >ブルーダ―シャフトのシリーズ >天使の大隊

第十幕 天使の大隊

10作にわたるシリーズも、ついにこの作品で完結。

舞台は、2月革命でロマノフ朝が倒れ、ケーレンスキーが臨時政府の実権を握ったころ。兵隊は上官の言うことを聞かなくなり、ロシア軍の秩序は崩壊していますが、ドイツとの戦争はまだ続いています。

中央政府は、この期に及んで、ドイツに対しての攻勢を企画。兵士の愛国心を焚きつけるため、女性志願兵だけからなる「死の突撃大隊」を組織し、先頭に立って突っ込ませようとします。

この女性部隊は実在したようですが、作品中では、その教官としてロマノフが着任したことになっております。

軍上層部の意地悪で、誰もが嫌がる「女部隊」に配属されたロマノフ。最初は嫌々でしたが、やがて隊長ボチャローヴァや隊員の熱意に影響されて、真剣に取り組むようになります。

しかし、真面目に訓練するほど、あるジレンマに悩まされるように。彼女たちが立派な兵隊になれば、すなわち最前線の死地に送り込まれることになるのです。

そして、隊員とともに前線に赴いたロマノフは、大切なものを失うことに。

その後については「エピローグ」で軽く触れられていますが、どうやらロマノフに、大きな心境の変化があったらしい。なお、もう一人の主人公フォン・テオフェルスについても、エピローグで触れられております。こちらも、残念な結末を迎えたようで。

登場人物

ロマノフ以外の登場人物たち。

ボチャローヴァ女性隊員だけからなる、「死の突撃大隊」の隊長。女傑。実在の、ボチカリョーヴァという人物をモデルにしている。
シャーツカヤ「死の突撃大隊」の隊員。美女。父や兄弟は、全て戦死。
ゴリーツィナ「死の突撃大隊」の旗手。
ブジョゾフスキーロシアの将軍。革命で兵隊が言うことを聞かなくなり、すっかり疲れきっている。
グヴォズジョフ師団の「兵士委員会」委員長。ボリシェビキ派。
エフレイモフ兵士。グヴォズジョフの指令で、ドイツ軍に攻撃計画をばらす。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

ロマノフは、女性部隊の教官に任命される。

革命で、秩序が崩壊したロシア軍。前線から戻ったロマノフは、指導部の悪意で、女性志願兵による「死の突撃大隊」の教官に任命される。

女性部隊ということで、嫌々やって来たロマノフ。しかし、隊長のボチャローヴァや隊員たちの熱心さに感心し、真面目に取り組むようになる。

中央政府は、女性兵士を真っ先に突撃させ、反抗的な兵士たちを発奮させよう、という狙い。女性部隊は、首都で騒ぐボリシェビキのデモ隊に立ち向かい、訓練の成果を見せる。

そして、ロマノフと隊員たちは、対ドイツ軍の最前線に派遣される。

女性兵士たちが、ついに前線へ。

最前線では、兵士たちは委員会を作り、将軍や将校の命令にも従わない。やって来た女性部隊たちにも暴漢兵士が寄ってくるが、ロマノフの指揮で撃退する。

ひ弱な隊員シャーツカヤに、狙撃の特訓をするロマノフ。当然ながら、恋仲になってしまう。そんな中、陣地のはずれから、灯火信号でドイツ軍に通信しているスパイを見つける。

スパイをとっ捕まえてみると、その黒幕は、「兵士委員会」の首領でボリシェビキのグヴォズジョフだった。ロマノフらは、グヴォズジョフを襲撃して逮捕する。

ドイツ軍と密通していたことを、悪びれずに認めるグヴォズジョフ。ロマノフに向かって、「女を銃弾にさらすのが正義か」と言い放つ。その言葉に、ロマノフは思い悩む。

そして、攻撃開始。

結局、他の兵士たちはやる気が無く、女性部隊と将軍たちだけで、突撃することになる。

たちまちドイツ軍の機銃が一斉射撃。バタバタと倒れる隊員たち。しかし、それを見たロシア兵たちは、奮起して突撃に加わる。

ドイツ軍の前進壕に到達したロマノフ。ドイツ兵と取っ組み合いになる。助けようと駆け寄るシャーツカヤ。そんな中、銃声が響いて…。

挿絵集

無声映画の雰囲気を出すため、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。

女性部隊の創設者で指揮官、ボチャローヴァ。
ロマノフは、女性部隊の指導教官に任命される。
ボリシェビキのデモ鎮圧に派遣された女性部隊。デモ隊は、すっかり馬鹿にしてます。
前線に女性部隊が到着するや、野獣のような兵士たちが殺到。そら、そうなりますわな。
夜ごとシャーツカヤに狙撃の特訓をしていたロマノフ。当然、二人はこういう関係に。
革命で、ロシア軍の秩序は崩壊。将軍たちも、「兵士委員会」のグヴォズジョフの同意が無ければ、作戦を実行に移せない。
そして、ついに突撃開始。
「エピローグ」より。装甲列車で、ドイツとの停戦協議にやって来た、とある赤軍の指揮官。つまりロマノフ。彼は、1941年が舞台の「ジャンル」シリーズ第二巻「スパイ小説」に出てくるオクチャーブリスキーと同一人物なのではないかと思われます。
同じく「エピローグ」より。ドイツでも、革命騒ぎで、兵士たちが反抗。ある将校は、銃で脅して服従を命じ、逆に兵士にボコボコにされる。その将校とは…つまりテオフェルスのことです。彼のその後については、「ジャンル」シリーズ第二巻「スパイ小説」を参照。

写真集

このシリーズには、「クロニクル」として、巻末に、当時の歴史写真がついています。

実在の、女性部隊指揮官マリヤ・ボチカリョーヴァ。強そう。最後は、ボリシェビキに銃殺されたらしい。
帝政崩壊後、ロシアは革命の混乱へ。
臨時政府の首班ケーレンスキー。
女性部隊の志願兵たち。ロシア女性はたくましいですねー。
整列する女性部隊。みんな足が長い。

ブルーダ―シャフトのシリーズTOPへ戻る