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←番外編 「ただのマサ」へに続く、マサが主人公のスピンオフ作品第二弾。アクーニン氏のFacebookによると、ウクライナ戦争でウツになりそうな日々なので、ちょっとした気晴らしになればと書いたそうです。
今回の舞台は、1900年の年が明けたばかりのフランス。なんと第十一巻 軟玉の数珠 塔に囚われた娘の事件の、直後から始まります。
この事件でファンド―リンが救ったはずの大富豪デゼサールですが、結局何者かに殺され、そこから、世界を支配しようとする大黒幕を追って、ファンド―リンとマサのヨーロッパをまたにかけた大捜索が始まります。
うれしいのは、この作品世界が、このまえ完結した。「ロシア国家の歴史」シリーズの最終巻「彼は去り際に尋ねた」とつながっていること。アクーニン氏の各作品は、シリーズごとの登場人物がフォン・ドールン一族によってつながっていましたが、ついに「ロシア国家の歴史」シリーズもそこに組み込まれたわけで。
なので、この作品の中にも「あっこの人物はあの作品の…」というのがいっぱい出てきます。
タイトルの「ヤマ яма」というのはロシア語で「穴」のことで、実際に穴というか地下鉄の坑道がストーリーに関わってきますが、一方で閻魔大王のこともロシア語でヤマというそうで、これまたストーリーに大きく関わってきます。
ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。
コルデリヤ | 富豪の娘で美女。両親を火事で亡くし、愛犬だけが家族。 |
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エンマ | コルデリヤをガードするため探偵社「ラル・インベスティゲーション」から派遣された女子。気が強い。「ラル・インベスティゲーション」というのは、「ロシア国家の歴史」シリーズ最終巻「彼は去り際に尋ねた」に出てきたマリー・ラルの探偵社ですね。 |
ヴァン・ドールン | フォン・ドールン一族の歴史を研究しているおっさん。 |
デゼサール | エラストシリーズ第十一巻 軟玉の数珠 塔に囚われた娘にも名前の出てきた大富豪で、ボー・ガルニー城のオーナー。レティツィヤ・フォン・ドールンの肖像画を持っていたために事件に巻き込まれるが、このレティツィヤはニコラスシリーズの第四巻 鷹と燕の主人公で、デゼサールはこの「鷹と燕」に出てきた船長デゼサールの子孫ですね。 |
ジョン・スミット | 盲目の犯罪団幹部。 |
アスペン | 犯罪団の一員。 |
E.P. | 謎に満ちた犯罪団の頭目。 |
大富豪デゼサールが殺され、レティツィヤ・フォン・ドールンの肖像画が盗まれた。ファンド―リンとマサは、肖像画の行方を追いつつ、親の遺産を狙われている美女コルデリヤに出会う。
ファンド―リンはコルデリヤに惚れる。探偵のエンマもコルデリヤのガードに加わり、マサはエンマに惚れる。
そんな中、アスペンらの犯罪団がファンド―リンたちを襲撃。ファンド―リン、コルデリヤ、エンマがさらわれる。
マサは一人で三人の救出に向かう。ドイツ各地の犯罪団の拠点を一人で潰し、ついに頭目のいる城に迫るが…