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第十五巻「別れを告げずに」でファンドーリンを亡くした後、日本に帰ってきたマサの冒険を描く、番外編。ただ回想シーンでファンドーリンもちょっと出てきます。
ひとり日本に帰ってきたマサは、いきなり関東大震災にあい、そこでヤクザや警察の大物と出会うことに。その縁があって、自分の出生の秘密にからむ大事件に立ち向かうことになります。
なにしろまた日本が舞台なので、アクーニン氏のトンデモ日本描写が炸裂しまくります。ただでさえ変なのに、大正時代なのを無視して現代日本語のフレーズを使ったりするから、違和感ありまくりです。
でもまあ、アクーニン氏の平常運転なので、これはしかたがないですね。なんで、よく知りもしないのに日本を舞台にするんでしょうか。ロシアではそういうのがウケるのか。
ただこの作品にはうれしいことが一つあって、第七巻「戴冠式」の主人公ジューキンのその後が、回想シーンで描かれているのです。「戴冠式」は一番好きな作品なので、個人的に、これはたまらない。生真面目なジューキンと、破天荒なファンドーリンは、第七巻で偶然行動を共にすることになり、最後に突然別れてそれっきりだったのですが、実はその後にもう一度出会っていたという設定!アクーニン氏もジューキンというキャラを気に入ってたんでしょうか。いいですね~。
ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。
タツマサ | マサの父。義賊のような泥棒で、悪党の財宝を奪う。それを「キトウドウ」と言うらしいですが、ロシア語で「高潔な盗み」と表現されているので、漢字をあてると「貴盗道」?そんなの日本語として変でしょう。 |
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タダキ | タツマサの敵の盗賊。タツマサと違って手段を選ばない悪党。 |
オリン | タツマサの友人の芸者。 |
ダンキチ | タツマサの弟子の青年。 |
マリ | 謎のジャズ歌手。マサの出生の秘密を知っている。 |
三代目 | 「ヒノマル組」というヤクザの親分。ダサい組名だが、日本有数の勢力を誇るらしい。任侠の道に厳しい。 |
クラノ | 日本の政界や極道を裏で操る謎の老人。 |
ババ | 警察官。最初は横浜の警察署長だったが、出世して「特高警察」の外国人対策幹部になる。 |
キバリチッチ | 日本人だが長くロシアで暮らし、共産党員になった奴。ボルシェビキの命令で、共産革命を日本に広げようとしている。 |
セミョーノフ | 実在のコサック将軍。ロシア革命で赤軍に終われて、日本に亡命している。 |
田中義一 | 実在の日本の首相。青年時代にロシアに留学していた。そこでファンドーリンやマサと出会ったことになっている。 |
ジューキン | 第七巻「戴冠式」の主人公。ロシア皇帝ニコライ二世の儀典長を務める。若き日の田中義一がロシアで巻き込まれた殺人事件を、ファンドーリンやマサとともに解決した、ということになっている。 |
カルノヴィッチ | 同じく第七巻「戴冠式」に出てきた、ロシア宮廷警察の長官。 |
ファンドーリンを失い、傷心で日本に帰ってきたマサ。いきなり関東大震災に遭遇し、行方不明になったイギリス娘を助けたりする中で、ヤクザの三代目親分や、警察官のババに出会う。
ババは昇進して外国人問題を担当する特高警察の部長になる。ババに頼まれて、マサは日本に亡命しているコサック将軍セミョーノフに近づく。セミョーノフはロシア帝室の黄金を持ち出しており、マサは謎の女マリと共に、黄金を狙うことになる。
セミョーノフや共産党の工作員キバリチッチ、そして政界の大物である田中義一らの間で、マサはいろいろ暗躍する。
結果、マサは日本を裏で操る老人クラノと対面し、自分の出生の秘密と、父タツマサが残した財宝の謎を解明することになるが…。
作品に登場する実在の人物
陸軍大将で総理大臣の田中義一。若い頃にロシアに留学し、ロシア軍を研究するために、現地の連隊に入隊したとか。外国人なのにそんなことできるんですね。 | |
コサック将軍セミョーノフ。赤軍に追われて日本に亡命。ロシア帝室の黄金を持ち出したという。 |