TOP >エラスト・ファンドーリンのシリーズ > 軟玉の数珠> 塔に囚われた娘、あるいは、短いが美しい、三賢人の道
ファンドーリンが、シャーロック・ホームズと共に、アルセーヌ・ルパンと対決する中編。全編にわたって、オマージュとパロディーにあふれているようです。(ルパンもホームズも読んだことないので分かりまへん)
ホームズシリーズにならい、友人のドクター・ワトソンの一人称で語られています。ただ時々、マサのしょーもない草稿が挿入され、一部のシーンはマサの視点で描かれています。
マサは、ワトソンがホームズシリーズの出版で儲かっていることを知り、自分もファンドーリンの本を書こうと思ったわけですね。ただ内容がひどいので、とてもベストセラーは無理だったでしょう。
題名の「塔に囚われた娘」というのはワトソンが書いた原稿の題名で、「短いが美しい、三賢人の道」というのは、マサのへぼ原稿の題名です。三賢人とはファンドーリン&ホームズ&ルパンのことでしょうが、マザーグースの「ゴダムの賢人」の歌にもひっかけているようです。
そのゴダムの賢人とやらをネットで検索すると、どうやらこういう詩らしい↓
Three wise men of Gotham,
ゴダムの村の三賢人
They went to sea in a bowl,
ボウルの舟で海へ出た
And if the bowl had been stronger
そのボウルがもっと丈夫だったら
My song had been longer.
私の歌ももっと長かったのに
作品の最後でホームズがこの詩を引用していますが、なるほど、ファンドーリン&ホームズ&ルパンの三賢人の対決は、まさにこの詩のような感じで決着がついたわけであります。
アクーニン氏もいろんなことをよく知ってますねー。
ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。
シャーロック・ホームズ | イギリスの有名な探偵。 |
---|---|
ドクター・ワトソン | ホームズの友人。 |
アルセーヌ・ルパン | フランスの怪盗。 |
デゼサール | フランスの大富豪。「全財産を渡さないと屋敷のボー・ガルニー城を爆破する」とルパンに脅迫され、シャーロック・ホームズに捜査を依頼する。 |
ボスコー | デゼサールの執事。 |
エジェニー | デゼサールの娘。棚から落ちて絶対安静のため、ボー・ガルニー城の塔から動かせない。 |
レブレン | パリの名医。 |
ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。
フランスの富豪デゼサールのもとに、怪盗アルセーヌ・ルパンから脅迫状が届いた。大晦日じゅうに全財産を渡さないと、居城を爆破するという。
城には負傷して絶対安静の娘エジェニーがいて動かせないため、脅迫に屈するしかない。困ったデゼサールは、シャーロック・ホームズとファンドーリンの両方に捜査を依頼する。
ライバル的な緊張感の中、捜査をするホームズとファンドーリン。
ルパンの爆弾は、城のどこかに隠されている。ホームズは聴診器を使って隠し場所を探そうとするが、ワトソンが聴診器を壊してしまい、だめになる。
一方ファンドーリンは、エジェニーの治療を担当している医師レブレンを尋問する。
いろいろあって、執事のボスコーと医師レブレンが怪しいということになるが、細部の推理はホームズとファンドーリンで違いがある。どっちが正しいのか?
結局ボスコーとレブレンは捕まる。喜ぶのもつかの間、爆破のタイムリミットまであと20分たらず。しかしホームズとファンドーリンは一向にあわてる様子がない。
二人はともに、爆弾の隠し場所を推理でつきとめていた。しかし、そこにはルパンのさらなるトリックが隠されていて…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
デゼサールの依頼を受け、ボー・ガルニー城にやってきたシャーロック・ホームズとワトソン。 | |
エジェニーと、ワトソン&ファンドーリン。エジェニーは、棚から落ちて脊髄を損傷し、はりつけ状態で二週間絶対安静を命じられている。上の写真は、シャーロック・ホームズとワトソン。 | |
バイオリンを弾いて精神を集中させるホームズ。 | |
暗闇の中でルパン一味を捕まえたはずが、同志討ちになったファンドーリン&マサ VS ホームズ&ワトソン。 | |
ワトソンにならって、ファンドーリンの冒険を出版し、ベストセラー作家になろうとたくらむマサ。急須には「名物」と書いてある? | |
ボー・ガルニー城のあるじデゼサール。 | |
ボー・ガルニー城の執事ボスコー。ふさふさの帽子なのかと思ったら、こういう髪型なんですな。 | |
エジェニーの治療に当たる医師レブレン。 | |
ボー・ガルニー城。城内のどこかに、ルパンが爆弾を仕掛けたという…。 |