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番外編 陰と陽

アクーニン氏が2006年に、「ロシアアカデミー・青年劇場」のために書き下ろした戯曲。ファンドーリンとマサが、中国の魔法の扇をめぐる殺人事件を解決します。

「陰と陽」はロシア語で「インとヤン」と言いますが、それに似た名前を持つ、インガとヤンのカップルが主人公。

この作品にも、アクーニン氏ならではのしかけがあります。全く同じ登場人物・舞台設定で、「白バージョン」と「黒バージョン」があるのです。この2つは、細かなところとラストが違う、というしくみ。

「白バージョン」は「陽」でヤンを中心にしたストーリーで、逆に「黒バージョン」は「陰」のインガが中心。陰と陽の二つが合わさって、完全体というわけですな。

事件の中心にあるアイテムが、中国に伝わる、伝説の「陰陽の扇」。片面は白、片面は黒になっているそうです。それにちなんで、本自体も、表表紙は白、裏表紙は黒になっております。

表から読むと白バージョンで、ひっくり返して裏から読むと黒バージョン。リバーシブルな小説なのであります。

登場人物

ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。

ヤン・ヴァレツキー天才の青年。大学はつまらんと中退し、独力で破傷風ワクチンの研究をしている。ヤンというのは、ポーランドとかによくある名前ですね。
インガ・ヴァレツカヤヤンのいとこで許嫁。
カジミール・ヴァレツキーヤンの親父。アル中。
スタニスラフ&リジヤインガの両親。
ディクソンヴァレツキー家の医師。イギリス人。
ジギスムント・ヴァレツキーカジミールとスタニスラフの兄弟で、屋敷の主。つい最近に病死。その遺産をめぐって、一族が集まる。
スリュニコフ公証人。ジギスムントの遺言を執行するためにやってきた。
ファージェイ故ジギスムントの執事。
アルカーシャ召使の青年。
グラーシャ料理女。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。

謎の扇がヤンの手に。

病死したジギスムントの遺言を確認するため、ヴァレツキー一族が屋敷に集合した。遺言によると、全財産は姪のインガに譲り、甥のヤンには「謎の扇」が譲られるという。

わけわからん扇だけもらって、憤慨するヤンと親父のカジミール。そこに、遺言の指示で呼ばれたファンドーリンが登場。扇の秘密を説明するために呼ばれたが、馬車が事故で大破し、遅れてしまった。

ファンドーリンによれば、この扇は、魔法の「陰陽の扇」で、ものすごい魔力が手に入る、という伝説があるらしい。

そんなこんなの興奮の中、コニャックを飲んだカジミールが急死する。おまけに停電のどさくさで、扇が誰かに盗まれる。

ファンドーリンの捜査をよそに、第二・第三の犠牲者が。

さっそく一族のメンバーを取り調べるファンドーリン。マサはマサで、使用人たちを取り調べる。

召使のアルカーシャは、医師のディクソンと何やら共謀しているらしい。尋問するファンドーリン。その目の前で、何者かにディクソンは射殺される。

ファンドーリンとマサは、消えた扇を探す。なんとか発見したと思ったら、インガとヤンが何者かに襲われて…。

写真集

実際に劇場で上演されたときの写真たち。

ファンドーリン役。アレクセイ・ヴィショールキンという役者さんらしいです。ちょっと白髪すぎますね。
ファンドーリン&インガと、ヘンな和服のマサ。扇でかすぎ!
これは別の劇団の写真っぽいですが、ヴァレツキー家の人々。
魔法の扇をめぐって、次々に殺人事件が発生。

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