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第二巻 ペラギヤと黒い修道士

第二巻は、やや神秘的な事件。巡礼者が集まる修道院の町に、突如出没した亡霊の謎を、ペラギヤが解決します。

舞台となるのは、ペラギヤたちの住むザヴォルジュスクから遠く離れた、「青の湖」のあたり。

湖に、新アララト修道院と新アララトの町というのがあり、さらに少し離れたところに聖バシリスクの僧院というのがあって、その辺でいろいろ事件が起きます。

位置関係がややこしいのですが、青の湖にはカナン島という大きな島があり、そこに新アララトがあります。ここは、巡礼者たちでにぎわう観光地になっています。

そんで、カナン島から小舟で行く「隣の島」というところに、中世に聖バシリスクが開いた、聖バシリスクの僧院があります。

この聖バシリスクの僧院は、俗世を離れた修業の場で、一般人は立ち入り禁止。選ばれた四人の長老がここで修業を積み、必需品を届ける小舟だけが、毎日往来しているらしい。

四人の長老たちは、眼だけ空いた頭巾で顔を隠し、聖なる数珠を作っているそうな。その数珠を売って、新アララト修道院は、けっこう儲けているらしい。

という新アララトの町に、「黒い修道士」こと聖バシリスクの亡霊が出現。夜ごと、湖の上を水上歩行したりして、人々を驚かせる。ついには、恐怖のあまり、自殺者まで出る始末。

というわけで、ペラギヤが調査に乗り出すわけであります。

「青の湖」がどこにある設定なのか不明ですが、ザヴォルジュスクから「ヴォログダ」まで鉄道で行って、そこから乗合馬車に乗る、と書いてあります。

ヴォログダつーのは、サンクト・ペテルブルクの東500kmくらいのところにある都市らしいので、その周りにいくつかある湖のことなんでしょーか。

精神病院も舞台になっており、異常な行動をする怪しい人物が、たくさん出てきます。それぞれが犯人のように見えて、実は違う、という肩すかし展開が続き、だんだんわけが分からなくなります。

しかし、最後の最後に真犯人が登場。うーむその正体は予想外でした。

登場人物

ペラギヤ以外の登場人物たち。

ミトロファーニイ主教おなじみ、ザヴォルジュスクの主教。
ベルジチェフスキー第一巻にも登場、地方裁判所の検事。
ラグランジュ同じく第一巻にも登場、警察長官。
アレクセイ・レンタチキンミトロファーニイが目をかけている若者。数学の天才で、人を小バカにした態度をとる。
ヴィターリイ神父新アララト修道院の院長。ビジネスの才能があり、自動販売機で聖水を売ったりして、業績をあげている。
ヨナ修道士新アララトの町がある、カナン島への連絡船の船長。もとは、捕鯨船の海の男。
クレオパ修道士聖バシリスク僧院がある「隣の島」へ、毎日ボートで必需品を届けている。
イズライリ長老聖バシリスク僧院で、隠遁生活をする長老。ほかに、同様の長老が3人いるらしい。みんな世捨て人なので、頭からすっぽり頭巾をかぶっているそうな。
ドナート・コロヴィン新アララトの町で、精神科クリニックを運営する医師。おそらく、ニコラス・ファンドーリンのシリーズ第三巻「F.M.」に出てきた、ジーツ・コロヴィンの先祖と思われます。
リジヤ・ボレイココロヴィンの知人の美女。
リャンペコロヴィンの患者。奇人変人の物理学者。
レフ・ニコラエヴィチもとコロヴィンの患者。退院したが、まだ新アララトに住んでいる。善良な紳士。
テルプシホーロフ勇敢なハンサム男。しかし、中身はやや病的な俳優で、やはりコロヴィンの患者。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

「新アララト」の町を震撼させる、黒い修道士の亡霊。

「青の湖」に浮かぶ島にある新アララト修道院の僧が、ザヴォルジュスクに急使としてやって来た。中世にこの地に僧院を開いた、「聖バシリスク」の亡霊が出現、恐怖のあまり自殺者まで出たという。

ミトロファーニイ主教は、秀才で生意気な若者レンタチキンを、調査のために派遣する。最初は、迷信を馬鹿にした報告を送って来たレンタチキン。だが、何かを目撃して発狂し、精神科医コロヴィンに治療を受けることになる。

ぶったまげたミトロファーニイは、今度は警察長官ラグランジュを派遣する。ラグランジュは、亡霊が出たという小屋を見に行くが、その後、拳銃自殺しているのを発見される。

さらにぶったまげたミトロファーニイの依頼で、今度は検事のベルジチェフスキーが調査に行く。変人学者のリャンペや、善人レフ・ニコラエヴィチに出会い、手掛かりをつかむ。

亡霊の出る小屋を見に行くベルジチェフスキー。そこで、恐ろしい体験をして、これまた狂ってしまう。

ペラギヤが、変装して潜入捜査。

ベルジチェフスキーまでおかしくなり、心労でミトロファーニイは寝込む。ペラギヤは、ミトロファーニイに内緒で新アララトへ向かう。

「リシーツィナ夫人」に変装し、いろいろ調べるペラギヤ。修道院長のヴィターリイ神父や、精神科医コロヴィンに会う。

コロヴィンのところで、発狂したレンタチキンやベルジチェフスキーに会い、変人リャンペにも合う。さらに、コロヴィンとの夕食の席で、美女リジヤとケンカになる。

いろいろ推理をかため、ついに亡霊をとっつかまえに行くペラギヤ。しかし、亡霊の逆襲を受け、監禁されてアジトに運ばれる。

何とか逃げ出し、美男のテルプシホーロフに助けられる。しかし、こいつもアブナイ男だった。大ピンチの時に、おりよくコロヴィンが来て助けられる。

こうなりゃ謎の中心に突入するしかない、つーことで、ペラギヤは聖バシリスク僧院のある「隣の島」に向かう。必需品を届けるクレオパ修道士に同行し、小舟に乗り込む。そこで、僧院のイズライリ長老から、謎の言葉をかけられる。

ついに、ペラギヤは僧院に突入。

寝込んでいたはずのミトロファーニイは、回復して聖アララトにやって来る。コロヴィンのところで、おかしくなったベルジチェフスキーに正気を取り戻させようとする。

その間に、ペラギヤは、リャンペの部屋で驚くべきものを発見。ミトロファーニイに置手紙をし、全ての謎を解決すべく、聖バシリスクの僧院へ突入する。

ペラギヤが行ってしまったことを知ったミトロファーニイは、リャンペを詰問。そこで、さらに新たな事実が明らかになる。

一方、僧院に潜入したペラギヤは、イズライリ長老に迎えられる。ペラギヤが来るのを待っていたと言う長老は、自らの秘められた過去を語って聞かせる。

そんなこんなで、全ての謎を解いたペラギヤ。ついに、聖バシリスクの亡霊に化けた真犯人と対面するが…。

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