原題は「クヴェスト」ですが、これはドラゴンクエストとかの「クエスト」のことですね。普通の小説ですが、各章のタイトルが「レベル1」「レベル2」とかなっていて、RPGのゲームをイメージしているようです。
舞台となるのは、1930年・スターリン時代と、1812年・ナポレオンの侵攻にさらされたモスクワ。それぞれの時代で、「天才になる薬」をめぐるストーリーが展開されます。
最後のほうはファンタジーな展開になり、「それを持ちだしたらなんでもありになるでしょ」的な設定で、強引に結末になったりします。
二つの時代で物語が関連する、というあたりは、ニコラス・ファンドーリンのシリーズの構成に似ております。しかも、1812年の主人公は、ニコラスシリーズ第二巻の主人公サムソン・フォンドーリン(本名ドミトリー・カルポフ)です。
それはいいとして、長い。長すぎますわ。アクーニン作品の中で、いちばん長いんちゃうか。もうちょっと話をはしょってくれんものか。
ガリトン・ノルト | アメリカの植物・生理学者。スキンヘッド。ロートヴェラーの研究所で、研究員として働いている。熱帯地方の探検経験が豊富な、アメリカンタフガイ。 |
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J・P・ロートヴェラー | アメリカの大富豪。ロートヴェラー研究所を主宰。ソ連・共産主義の脅威に対抗するため、ノルトらをモスクワへ送り込む。 |
アイゼンコップフ | ドイツ人。ノルトのチームのメンバー。第一次大戦で、顔に大やけどを負って、人工皮膚のマスクをかぶっている。 |
ゾヤ・クリンスカヤ | ロシア公爵家出身。革命後アメリカへ亡命、ロートヴェラーのもとで働いていたが、ノルトのチームに加わる。若美女。 |
グローモフ | スターリンの主治医にして、ソ連最高の化学者。スターリンのために、天才になれる薬を作っているらしい。 |
カルトゥーソフ | ソ連秘密警察の指揮官。ノルトらを追跡する。 |
オクチャーブリスキー | ソ連赤軍情報部の将校。この人もスキンヘッド。カルトゥーソフの秘密警察とは対立関係にあり、ノルトらを援助する。なお、第二巻「スパイ小説」では、主人公の一人として登場します。 |
ビチョーク | ジプシーのおっさん。タクシー運転手。ノルトらを助ける。 |
”患者” | 謎の老人。マラヤロスラヴェツ近郊の森にある、巨大な療養施設に隔離されている。 |
サムソン・フォンドーリン | 24歳にして、モスクワ大学教授の天才。ニコラス・ファンドーリンのシリーズ第二巻「課外読書」の主人公で、ダニラ・フォンドーリンの養子。元の名前は、ドミトリー・カルポフと言いました。 |
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キラ | サムソンの妻。年上で才女。 |
アンクル男爵 | ナポレオンの主任薬剤師。捕虜になったサムソンの知性を見抜く。 |
アトンとホンス | アンクルの護衛。エジプト人の双子。 |
ネタバレにならない程度に解説。
アメリカ人のノルトは、大富豪のロートヴェラーから秘密任務を受ける。ソ連が進めている「天才になる薬」製造計画を、ぶっ潰せという。
部下として、顔なしドイツ人のアイゼンコップフと、ロシア美女ゾヤを従え、モスクワに向かう。途中で何度も殺されそうになり、ソ連の秘密警察にマークされていることが分かる。
それでも何とかモスクワに潜入し、天才薬を作っている天才研究所に突入する。隠し部屋で謎の薬を見つけ、それを飲んだノルトは、謎のヒントをつかむ。
ノルトらは、天才研究所長のグローモフを追跡し、第二の謎の薬を見つける。秘密警察の追手が迫るが、軍情報部のオクチャーブリスキーに助けられる。軍の援助で、グローモフ研究所の心臓部に突入することになる。
衛兵を殺しまくり、ついにグローモフの部屋にたどりついたノルトたち。グローモフはなんとか時間稼ぎをしようとするが、オクチャーブリスキーが乱入して、まとめて始末してしまう。
とりあえず任務完了、と帰国の途につくノルトら。しかし、帰りの汽車が、たまたま謎に関わる村マラヤロスラヴェツに停車する。運命を感じたノルトらは、謎を完全解明することを決意。汽車を降り、森の中の巨大な療養施設に突入する。
施設には、謎の老人が隔離されていた。死にかけながら、わけわからんことを言う老人。彼を救おうとするノルト。村に戻ろうとして、またオクチャーブリスキーに出くわすが、うまくごまかす。
そして再び老人のもとへ戻ると、信じられない光景が待ち受けていた…。
天才化学者のサムソン・フォンドーリンは、祖国ロシアをナポレオン軍から救うため、自作の薬品を持って前線に行く。フランス軍に潜入し、「怪力薬」的なものを飲んでナポレオンを始末しようとするが、とっ捕まる。
ナポレオンの薬剤師アンクル男爵は、サムソンの能力を見抜き、自分の発明した薬の秘密を話す。秘密を知ったサムソンは、脱走して、新たなナポレオン阻止計画を実行する。
全てのカギは、アンクル男爵が握っていると判明。サムソンの襲撃も、アンクルは人間離れしたパワーではねのける。退避したサムソンは、盗賊化した脱走兵に撃たれるが、またアンクルに助けられる。
ようやく傷が治ったサムソン。そのころ、ナポレオン軍はモスクワを捨てて退却を始める。どさくさでアンクルと離れたサムソンは、マラヤロスラヴェツの教会に、秘密を隠す。
そして再び、アンクルのもとへ。再会を喜ぶアンクルは、ついに、自身の驚くべき秘密をすべて話して聞かせる…。
全てを失ったノルトは、ニューヨークのロートヴェラーのもとへ戻る。
作戦の失敗を、隠さず報告するノルト。しかし、ロートヴェラーは、全てを予見していた。彼の口から、天才薬の秘密、そして、彼とサムソン・フォンドーリンとの関係など、全ての謎が明かされるのだった…。
ハードカバー版には挿絵があるそうで。なんかCGみたいなペタッとした絵ですが。
プロローグの1シーン。天才研究所の所長グローモフをぶっ殺そうとする、赤軍情報部のオクチャーブリスキー。スキンヘッドなのは、主人公ノルトと同じ。 | |
大西洋を渡る客船で襲われ、パラシュートで脱出しつつ恋仲になる、ノルトとゾヤ。 | |
ノルト一行は、なんとかモスクワに到着。 | |
博物館の地下に、秘密の天才研究所を発見。 | |
秘密警察のカルトゥーソフに、尋問されるノルト。 | |
ノルトらを尋問するオクチャーブリスキー。スキンヘッド対決。 | |
一方、1812年。祖国ロシアを救うべく、最前線に赴いたサムソン・フォンドーリン。 | |
ボロジノの戦いで、なぜか生気を欠くナポレオン。 | |
ロシア軍の後退戦術で、モスクワは火の海に。サムソンの隣はアンクル男爵。 | |
退却するナポレオン軍を、ロシアのコサック騎兵が襲う。 | |
愛妻キラに、メッセージ薬を残すサムソン。 |