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第十一巻 軟玉の数珠/世界終末の前に

この中編は、極北の村々が舞台。

異端的ロシア正教の信仰をかたくなに守る民衆が、終末思想に取りつかれて連続自殺。その裏には素朴な民衆をあおっている黒幕がおり、そいつとファンドーリンが対決します。

聖典に隠された暗号とか、異端思想とか、終末論とか、ロシア正教の神秘思想にあふれた作品。

おそらくウンベルト・エーコの『薔薇の名前』を意識していると思われます。

登場人物

ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。

コハノフスキー統計学者。北方のど田舎で、ロシア初の国勢調査を実施中。
クルィジョフコハノフスキーのガイドを務めるおっさん。元流刑囚で無神論者。
ヴィケンチイ神父太ったあつかましいおっさん。
ヴァルナーヴァヴィケンチイ神父に同行している若い聖職者。
アジンツォフ警官。
シェシューリン著名な心理学者。終末論による集団ヒステリー・集団自殺を研究している。
エヴパチエフ実業家。進歩的な雑誌を発行している。異端信者の家系。
ラヴレンチイ神がかり行者。"ユロージヴィ"というやつで、まあ頭のおかしい人なんですが、神の言葉を伝えると民衆から信じられている。
キリラ同じく神がかりの女性で、説話の語り部みたいな人。
ポルカーシュカキリラが連れている娘で、"罵りを受ける行"の修行をしている。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。

ロシア初の国勢調査を見学するため、ファンドーリンはロシア極北へ。

1897年、ロシア帝国で初の国勢調査が実施されることになる。信仰を守り自治生活をしているラスコーリニキ(ロシア正教分離派)たちの調査に興味を持ったファンドーリンは、極北の村を訪れる。

統計学者のコハノフスキーに同行し、ラスコーリニキの村へ。途中で遭難していた聖職者のヴィケンチイ神父らを助ける。

ラスコーリニキの村々で、終末論による自殺が多発。

極北にやって来てみると、村人たちの謎の自殺事件が発生。「国勢調査は神の怒りに触れる」として、救済を求めて地下でみずから生き埋めになったという。

ファンドーリン一行は、神がかり行者のラヴレンチイがデマを広めて自殺をあおっていると睨み、彼の後を追う。心理学者のシェシューリンと、実業家のエヴパチエフも加わる。

さらに説話の語り部キリラと娘も加わり、北へ北へと向かう。しかし村人の自殺は止まらない。

写本家の村バガミーロヴォへ、そして最北の地へ。

一行は、聖なる写本家の村ヴァガミーロヴォへ到着。村の主の四長老と話すが、手掛かりは得られない。さらに北へ向かう一同。

ファンドーリンは、事件の背後に、聖典「アンブローシイ長老の行状記」が絡んでいると見抜く。そこに隠された暗号を解読し、ついに事件の黒幕をつきとめるが…。

挿絵集

アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。

ラスコーリニキ(ロシア正教分離派)の村にて。国勢調査は神の怒りを買うと恐れて、民衆が一家心中。無知蒙昧は恐ろしいですな。真中に立っているヒゲ男は、変装したファンドーリン。
放火された小屋から、キリラを助け出すファンドーリン(ヒゲで変装中)。
写本家の村バガミーロヴォにて。四人の長老が、日がな一日、聖典の写本を作っている。目が悪くなりそうですね。

その聖典をそらで暗誦するキリラには、長老たちもびっくり。
熱心な統計学者コハノフスキー。
ガイド的おっさんクルィジョフ。盲信にとらわれた民衆を軽蔑している。
ペテルブルクから来た心理学者シェシューリン。
神がかり行者ラヴレンチイ。
腹黒いヴィケンチイ神父。
若い補祭(ジヤコン)のヴァルナ―ヴァ。
やり手の警官アジンツォフ。
実業家のエヴパチエフ。事件の現場に残された、「アンブローシイ長老の行状記」からの抜粋をもっている。
バガミーロヴォ村。写本家の四長老の家と教会。その他の村人は、離れた所に住んでいる。

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