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第十一巻 軟玉の数珠/木端の人生から

鉄道会社の社長が毒殺された。ファンドーリンは、後継者の息子の依頼で、犯人を追う。鉄道敷設のコンペを巡って争う、ライバル会社の社長が黒幕と疑われるが…。

容疑者は、社長室の隣の監査室?に勤務する5人。大きな犯行の割には、どいつも小物で、どうも決め手に欠ける。さすがのファンドーリンも悩むわけですが…。

最後の謎解きは、まさに盲点を突かれる感じ。古典的な推理小説に、よくこういう結末がありそうですね。

ちなみに題名は、「木を切れば、木っ端が飛ぶ(大事業には多少の犠牲はつきもの)」というロシアの慣用句から来ています。タネ明かしとともに、その意味も明らかになるわけで、実に読後スッキリな良編と思われます。

登場人物

ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。

レオナルド・フォン・マック鉄道会社"フォン・マック&サンズ"の社長。何者かに毒殺された。名前から分かる通り、ドイツ系。
セルゲイ・フォン・マックレオナルドの長男で後継者。父がライバル会社に暗殺されたのでは、と疑っている。
ステルン故レオナルドの秘書。レオナルドと同じお茶を飲んだため、不幸にも巻き添えで死亡。この人もドイツ系の名前。
バニューヒンペテルブルクの高名な捜査官。偉そうにしている。というのは、当時はペテルブルクが首都で、モスクワは古都だが第二の都市だったから。他の巻でも、ペテルブルクの高級官僚たちは、総じて嫌な奴扱いです。
マヴラステルンの婚約者で、画家志望の娘。
セルジューク"フォン・マック&サンズ"勤務の上級事務員。マヴラの父。
ランドリノフタイプライターの技師。マヴラに好意を持っている。
ザウセンツェフ"フォン・マック&サンズ"勤務の事務員。若い。
フェドート・フェドートヴィチ故レオナルドの従僕。
ムーシャ故レオナルドの料理女。胃腸の悪い主人のために、特別食のランチを作っていた。
マサロフ"フォン・マック&サンズ"のライバル会社"汽船商会"の社長。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。

鉄道会社の社長が、何者かに毒殺された。

鉄道界の大物が、お茶に入れられた毒で、殺害された。たまたま巻き添えで秘書と使用人も死んでしまう。捜査のため、ペテルブルクから高名な捜査官バニューヒンがやってくる。

バニューヒンは、社長の座を狙った息子セルゲイの犯行を疑う。セルゲイは、ファンドーリンにも捜査を依頼。ファンドーリンは、秘書のふりをして、犯人がいると思われる監査室に潜入する。

事件の背後には、鉄道敷設のコンペをめぐる、ライバル社との争いが関係しているらしい。ファンドーリンは、監査室の中に、ライバル会社"汽船商会"のスパイ&殺害犯がいると推理する。マサはライバル会社に潜入し、スパイを待ち伏せする。

そんな中、夜道でファンドーリンは何者かに銃撃される。

令状をとったバニューヒンは、セルゲイを逮捕しにのりこんでくる。しかしその時、ファンドーリンが立ち上がり、事件に隠された驚くべき真相を明らかにした…。

挿絵集

アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。

"フォン・マック&サンズ"監査室(?)の風景。画家志望のマヴラは、社員でもないのにやって来て、ファンドーリンの肖像画を描いている。左上の写真は、ペテルブルクから来た捜査官バニューヒン。

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