TOP >エラスト・ファンドーリンのシリーズ > 軟玉の数珠> 木端の人生から
鉄道会社の社長が毒殺された。ファンドーリンは、後継者の息子の依頼で、犯人を追う。鉄道敷設のコンペを巡って争う、ライバル会社の社長が黒幕と疑われるが…。
容疑者は、社長室の隣の監査室?に勤務する5人。大きな犯行の割には、どいつも小物で、どうも決め手に欠ける。さすがのファンドーリンも悩むわけですが…。
最後の謎解きは、まさに盲点を突かれる感じ。古典的な推理小説に、よくこういう結末がありそうですね。
ちなみに題名は、「木を切れば、木っ端が飛ぶ(大事業には多少の犠牲はつきもの)」というロシアの慣用句から来ています。タネ明かしとともに、その意味も明らかになるわけで、実に読後スッキリな良編と思われます。
ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。
レオナルド・フォン・マック | 鉄道会社"フォン・マック&サンズ"の社長。何者かに毒殺された。名前から分かる通り、ドイツ系。 |
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セルゲイ・フォン・マック | レオナルドの長男で後継者。父がライバル会社に暗殺されたのでは、と疑っている。 |
ステルン | 故レオナルドの秘書。レオナルドと同じお茶を飲んだため、不幸にも巻き添えで死亡。この人もドイツ系の名前。 |
バニューヒン | ペテルブルクの高名な捜査官。偉そうにしている。というのは、当時はペテルブルクが首都で、モスクワは古都だが第二の都市だったから。他の巻でも、ペテルブルクの高級官僚たちは、総じて嫌な奴扱いです。 |
マヴラ | ステルンの婚約者で、画家志望の娘。 |
セルジューク | "フォン・マック&サンズ"勤務の上級事務員。マヴラの父。 |
ランドリノフ | タイプライターの技師。マヴラに好意を持っている。 |
ザウセンツェフ | "フォン・マック&サンズ"勤務の事務員。若い。 |
フェドート・フェドートヴィチ | 故レオナルドの従僕。 |
ムーシャ | 故レオナルドの料理女。胃腸の悪い主人のために、特別食のランチを作っていた。 |
マサロフ | "フォン・マック&サンズ"のライバル会社"汽船商会"の社長。 |
ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。
鉄道界の大物が、お茶に入れられた毒で、殺害された。たまたま巻き添えで秘書と使用人も死んでしまう。捜査のため、ペテルブルクから高名な捜査官バニューヒンがやってくる。
バニューヒンは、社長の座を狙った息子セルゲイの犯行を疑う。セルゲイは、ファンドーリンにも捜査を依頼。ファンドーリンは、秘書のふりをして、犯人がいると思われる監査室に潜入する。
事件の背後には、鉄道敷設のコンペをめぐる、ライバル社との争いが関係しているらしい。ファンドーリンは、監査室の中に、ライバル会社"汽船商会"のスパイ&殺害犯がいると推理する。マサはライバル会社に潜入し、スパイを待ち伏せする。
そんな中、夜道でファンドーリンは何者かに銃撃される。
令状をとったバニューヒンは、セルゲイを逮捕しにのりこんでくる。しかしその時、ファンドーリンが立ち上がり、事件に隠された驚くべき真相を明らかにした…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
"フォン・マック&サンズ"監査室(?)の風景。画家志望のマヴラは、社員でもないのにやって来て、ファンドーリンの肖像画を描いている。左上の写真は、ペテルブルクから来た捜査官バニューヒン。 |