TOP >エラスト・ファンドーリンのシリーズ >死の恋人(男)
前作の第八巻「死の恋人(女)」とペアになった作品。といっても、内容に関連はありません。ただ、今回の事件は第八巻と同時に進行しており、たまに第八巻で出てきたシーンが別の視点から描かれていたりします。
この作品では、モスクワの犯罪街ヒトロフカで起こった謎の連続惨殺事件について、主人公の青年セニカの視点で描かれます。
本作のタイトルは「死の恋人(の男)」ということで、「スメルチ(死)」というあだ名で呼ばれる美女に心を奪われた男たちが登場し、ストーリーが展開していきます。ちなみに主人公セニカもその一人。ガキのくせに。
第二巻「レヴィアタン」日本語版の解説によれば、アクーニン氏は本作を「ディケンズ風推理小説」と称しているとのこと。おそらくこれは、ディケンズの小説「オリバー・ツイスト」をモチーフにして書かれた、ということじゃないかと思われます。たぶん。
主人公の孤児が、犯罪グループに加入するものの、親切な紳士の助力で更生する、というストーリーが共通しているようです。
ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。
セニカ・スコーリコフ | 主人公で孤児の青年(少年?)。義理の叔父に引き取られるが虐待されて逃げ出し、ギャングの首領クニャージの部下になる。16歳?にしてタバコは吸うわ酒は飲むわ路上の女性と何がしかの関係になるわでむちゃくちゃですが、まあ1900年の話ですからね。 |
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"スメルチ(死)" | 絶世の美女。彼女と恋人になった男は、なぜかほどなく急死する、という恐ろしい運命を持つ。そのために「スメルチ(死)」と呼ばれております。「スメルチ:死」は女性名詞なので、女性のあだ名になるわけですね。 |
"クニャージ(公爵)" | 犯罪街ヒトロフカでのし上がって来た、ギャングの頭目。 |
"アチコー(目?)" | クニャージの右腕。紳士風の服装に、ロン毛で眼鏡をかけている。喋り方も丁寧だが、キレると豹変して残虐になる。アブナイ系の人ですね。 |
"ウプィリ(吸血鬼)" | クニャージと勢力を争う、ギャングの親玉。 |
ターシュカ | セニカの恋人?の少女。犯罪街ヒトロフカで、いかがわしい職業に従事している。13歳なんですがねー。花が好き。 |
シニューヒン | 清書屋?地下で昔の財宝を発見した後、何者かに惨殺された。 |
クフシンニコフ | セニカの弟ヴァーニャの里親。裁判官。 |
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プズィリョフ | セニカの義理の叔父。セニカを引き取るが、こき使った上に虐待する。 |
ブードニコフ | ヒトロフカにずっと勤務する警官。 |
ソーンツェフ | ヒトロフカの警察署長。 |
サムシートフ | 宝石商。セニカが見つけた財宝を買い取る。 |
ジョルジュ | 学生。セニカに上流階級のマナーを教える。 |
ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。
両親を亡くしたセニカは、非道な伯父に引き取られるが、虐待されて逃げ出す。犯罪街ヒトロフカに流れ着き、こそ泥をして暮らすようになる。
ギャングのボスであるクニャージの愛人スメルチを目撃し、一目ぼれする。なんとかスメルチと知り合いになり、その口利きでクニャージの部下になる。
持ち前の利発さでセニカは手柄を立てる。しかしクニャージの右腕"アチコー"の残虐さに恐れをなして、逃げ出してしまう。
セニカは、盗み聞きした話をたよりに、お宝を見つけたシニューヒンの家を訪ねる。そこで惨殺されたシニューヒンの家族を発見する。
かろうじて息のあったシニューヒンから、セニカは宝のありかを聞く。地下で銀の延べ板?を発見し、一気にリッチになる。
セニカはリッチな生活を満喫する。そこに、謎のダンディー紳士"エラスト・ペトローヴィチ・ネイムレス"(言うまでもなくファンドーリン)と、執事の日本人マサが現れる。
ネイムレス氏は、連続する惨殺事件を調査しており、セニカが目撃者であることを突き止めていた。彼の作戦で、セニカとスメルチは協力し、抗争中のギャングの親玉クニャージとウプィリを、宝のありかで鉢合わせにさせようとするが…。
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
シニューヒンの惨殺現場を検分するセニカとファンドーリン&マサ。 | |
宝を見つけてリッチになったセニカは、ジョルジュに上流階級のマナーを教わる。これはオペラ鑑賞中。 | |
美女スメルチに言い寄っているところをクニャージに見つかり、逃げ出すセニカ。シャツを脱いでいるのは、破れていたのを繕ってもらったからです。 | |
ネイムレス氏(ファンドーリン)の三輪乗用車に試乗するセニカ。 | |
悪党どもを一網打尽にすべく現れた、ファンドーリンと警官たち。左下のユダヤ少年モチャは、変装したセニカ。 | |
セニカの恋人ターシュカ。 | |
勢力拡大中のギャングのボス、クニャージ。 | |
キレるとあぶないアチコー。 | |
クニャージのライバル ウプィリ。 | |
警察署長のソーンツェフ大佐。 | |
ヒトロフカの名物警官ブードニコフ。巨漢で怪力。 |