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時は1914年6月、第一次大戦のきっかけとなったサラエボ事件が起こったころ、ファンドーリンが、恐るべきテロリストの「オデッセイ」を追う物語。
ファンドーリンは58歳になり、前の第十二巻で出会った女優クララ(本名エリザ)と結婚していますが、すでに二人の仲は冷え切っているらしい。
「黒い町」というのは、舞台となるバクー油田のあたりのことで、石油で真っ黒な土地ということのようです。
石油は当時すでに重要な資源となっておりましたが、ロシア石油のほとんどを産出するバクーの戦略的価値は大で、ロシア帝国を転覆させようとする革命家とか、敵国ドイツやオーストリアのスパイとか、ついでに乱暴な富豪だの盗賊だの山賊だのが集まってカオスな町になっていたようです。
ファンドーリンはオデッセイを追ううちに、彼の石油労働者一斉ストライキ計画を阻止できるかという話になり、やがては第一次大戦の勃発を防げるのか的なところまで話が広がってゆきます。
そして最後は、急展開で謎を秘めたラストに。もしやファンドーリンはお亡くなりに?しかし、彼の息子は1920年に生まれているはずですが…。
そのへんは、さらに次の作品で明らかになるのでしょうか。
ファンドーリンとマサ以外の登場人物たち。
オデッセイ | ボルシェビキの革命家。テロリストでスゴ腕の暗殺者。またの名を「ジャーチェル(キツツキ)」。 |
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クララ・ルンナヤ | ファンドーリンの妻。映画女優。第十二巻「世界は劇場」にも出てきまして、その時はエリザ・アルタイルスカヤ=ルアンテンという名前でしたが、観客受けする芸名としてクララになったそうな。ファンドーリンとの仲は、冷え切っているようであります。 |
ムッシュ・シモン | クララ主演の映画を次々にヒットさせるプロデューサー。第十二巻にも出てきましたが、もともとは第九巻「死の恋人(男)」の主人公セニカ・スコーリコフです。 |
レオン・アルト | 映画監督。フランス風の名前を名乗っているが、もともとバクー出身。クララに惚れているらしい。 |
アルタシェソフ | アルトの父。バクーの町の大物。 |
シュービン中佐 | バクー憲兵隊のNo.2。 |
サーダート=ハヌム | バクーの実業家夫人。 |
ザファール | サーダート=ハヌムに忠実なペルシア人。宦官で、つまり去勢されている。 |
ハチャトゥール | アルメニア系の殺し屋。片腕。 |
カラ・ガシーム | 巨漢の盗賊。 |
ジュコーフスキー将軍 | 憲兵隊司令官。ブルーダーシャフトのシリーズにもたびたび登場します。やり手だが、ファンドーリンとは対立関係にある。 |
セン=テステフ | 警察長官。フランス系の名前。 |
ネタバレにならない程度に解説。
すご腕のテロリスト「オデッセイ」に、皇帝ニコライ二世が狙われた。たまたま現場にいたファンドーリンは、見事にオデッセイに裏をかかれ、悔しいので追跡する。
オデッセイは、油田で有名なカフカス地方のバクーにいるらしい。ファンドーリンも後を追う。バクーに着くなり、盗賊だのにやたらと襲われる。
バクーには、ファンドーリンの妻の女優クララも、映画のロケで滞在中。結婚生活が冷え切っているので、ファンドーリンは会いたくないが、いちおう顔だけ見せる。そこで、映画プロデューサーで旧知のムッシュ・シモンと再会する。
クララとシモンの頼みで、ファンドーリンは石油王アルタシェソフのパーティに行き、憲兵隊の切れ者シュービン中佐に会う。その帰りに殺し屋ハチャトゥールにやられそうになるが、盗賊カラ・ガシームに救われる。
ファンドーリンは、カラ・ガシームの助けを得て、殺し屋ハチャトゥールのアジトに突入する。ハチャトゥールはガシームがぶっ殺してしまう。
一方、話は変わって、バクーの実業家夫人サーダートは、謎の一味に大切な息子を誘拐される。犯人の要求は金ではなく、「油田の労働者との労働条件交渉で譲歩するな」という奇妙なものだった。サーダートはカラ・ガシームに助けを求め、ファンドーリンは、犯人一味がオデッセイの関係者ではないかと考える。
ファンドーリン&ガシームは、ボートで逃げる誘拐犯一味を追う。とっ捕まえて意外な頭目を見つけ、その結果、さらなる黒幕を明らかにする。
黒幕と対決したファンドーリンらは、オデッセイのアジトを発見。結果、みんなぶっ殺すことになる。
テロリストと黒幕を倒したはずなのに、バクーでは労働者のストライキが続き、騒然とした状況。ファンドーリンは首都の警察と連絡を取り、事態を解明しようとする。
そんな中、クララと映画の撮影隊が盗賊に誘拐される。しかたなくファンドーリンはカラ・ガシームと助けに行く。さらにオーストリアのスパイにも襲われる。
世の中は第一次大戦の勃発を前に、大混乱。そこへ首都から憲兵隊司令官ジュコーフスキーがやって来て、ファンドーリンに皇帝直々のミッションを命じる。しかしそれとはあまり関係なく、ファンドーリンはオデッセイ(やっぱり生きてた)を追い詰める。
石油精製所を爆破しようとするオデッセイ。ファンドーリンはついに最終対決する。
なんとかやっつけた形になり、ようやくジュコーフスキーのミッションに向かうことになる。が、その前にまだクララが盗賊にさらわれており、それを助けに行く。
盗賊など一瞬でカタがつくはずだった。が、思わぬところで思わぬ急展開。はたしてファンドーリンの運命は…?
アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。
ファンドーリンの盟友マサ。初老になりましたが、あいかわらず女好き。 | |
ファンドーリンやマサと旧知のムッシュ・シモン。映画プロデューサー。 | |
バクーの石油王アルタシェソフ。 | |
バクー憲兵隊のシュービン中佐。丸っこいですが切れ者。 | |
盗賊カラ・ガシーム。憲兵隊の調書ファイルより。 | |
バクーで映画を撮影中の女優クララ。ファンドーリンの妻。 | |
殺し屋ハチャトゥールのアジトを襲う、ファンドーリンとカラ・ガシーム。 |