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違う時代の英雄

アクーニン氏が「アナトリー・ブルスニキン」という変名で発表した第二作。19世紀の作家レールモントフの『現代の英雄』をモチーフとしております。

舞台となっているのは19世紀初頭のカフカス山岳地帯で、ロシアとイスラム系山岳部族との間に激しい戦争があったころ。実質的主人公のニキーチンは、この地帯に駐屯する騎兵下士官です。

作品の主題としては、愛と嫉妬と罪、という感じでしょうか。遠く離れた婚約者を決して裏切らないニキーチンに、若美女ダリヤが惚れたりして、一方で語り部のマンガロフはダリヤに惚れたりしていて、その背景で戦争とか冒険とか陰謀とかがあったりします。

淡々とした展開ながら、最後の最後に驚きの真相が明らかになり…なかなかの良作であります。

なお、モチーフ元の『現代の英雄』は、ぺチョーリンというかわいい名前の主人公が、カフカス地方でいろいろ女子と関わりを持って、その救われない性格の描写が見どころらしいです。

登場人物

マンガロフカフカス地方に配属された軍人。物語の大部分は、この人の回想録で構成されております。
フィーグネル将軍中部カフカス地域の司令官。
ダリヤ将軍の娘。若美女。ペテルブルクから父を訪ねてカフカスにやって来る。
キスキスマンガロフの旧友。公爵で金持ちで遊び人。
バージル同じくマンガロフの旧友で遊び人。
ニキーチンマンガロフの部下で、年配の下士官。デカブリストの乱の政治犯としてシベリアに流刑になっていて、刑期満了後、兵卒としてカフカスで従軍。知的で含蓄ある人物。この人が実質的な主人公です。
アリーナニキーチンの婚約者だが、ずっと遠距離恋愛。
イナゼムツォフニキーチンの友人。密輸船の船長。
キューヘンヘリフェルニキーチンの友人。医者。
ガルバーツィイニキーチンの家来みたいなカフカス人。
チェストノコフカフカス憲兵隊の司令官。
エマルハーンチェストノコフの情報屋をしているカフカス人貴族。
ザーラカフカス山賊の族長の娘。耳が聞こえない。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

若き騎兵将校マンガロフは、謎めいた兵士ニキーチンと出会う。

カフカスでイスラム山岳民族と戦うマンガロフは、辺鄙な要塞の隊長になる。そこで、部下の一人ニキーチンが、知的で波乱の人生を送ってきたことを知る。

ニキーチンは敵の一斉蜂起を察知し、マンガロフに伝える。マンガロフはニキーチンを連れて司令部の町に戻り、そこで司令官の娘ダリヤや、その他いろいろな人物に出会う。

マンガロフは美娘ダリヤに惚れる。ダリヤは、ニキーチンの婚約者の頼みで、ニキーチンの近況を知ろうとする。

イスラム住民が一斉蜂起して大戦争。

ロシア軍とイスラム住民との戦争が起こる。事前に察知していたロシア軍は、待ち伏せを仕掛けるが、失敗する。

戦果がいまいちで、マンガロフは辺鄙な要塞に戻される。ダリヤはこっそり彼のもとを訪ねようとして、盗賊にさらわれる。

ダリヤが誘拐され、大騒ぎになるロシア軍。マンガロフは、ニキーチンとその家来のガルバーツィイと共に、救出に向かう。そこで、盗賊長の娘ザーラの協力を得る。

恋愛のもつれと陰謀の人間模様。

結局ダリヤは救出される。そのどさくさで、ダリヤはニキーチンに惚れてしまう。しかもそこに、ニキーチンの婚約者が訪ねてくる。

ややこしい話になり、マンガロフとニキーチンは決闘沙汰になる。さらに、憲兵のチェストノコフは、勝手に救出作戦をしたニキーチンを恨み、陰謀を仕掛ける。はたしてニキーチンに平穏な日は訪れるのか…?

画像集

参考画像など。

『現代の英雄』の作者ミハイル・レールモントフ(1814-1841)。近衛士官かつ詩人だったが、いろいろ問題を起こしてカフカス地方に転属。最後は決闘で、26歳の若さでお亡くなり。もうちょっと命を大切にしましょうよ。
1825年の12月に起こったデカブリストの乱。自由主義的改革を求めた、青年将校の反乱だったようです。デカーブリというのは12月の意味。
ロシア皇帝ニコライ一世。即位するなりデカブリストの乱が起こり、反動的な厳しい政策をとる。同時代の人からもえらく嫌われていたようです。
カフカス地方のイスラム住民は、大体こんな服装だったようで。なかなかかっこいいですね。胸に筒がいっぱい付いているのは、ライフルの弾が入っています。

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