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9の救世主

アクーニン氏が「アナトリー・ブルスニキン」という変名で発表した第一作。ブルスニキン名義で、他に2作品あります。

17世紀、ピョートル大帝が現れた時代が舞台。題名の「9の救世主」というのは、ロマノフ王家に伝わる秘宝のイコン(聖像画)の名前で、つまりキリストの肖像画です。

ロマノフ家の開祖フィラレートのもとに、謎の老人が現れて、このイコンを授けたんだそうで。本当にそんな秘宝があるのか知りませんが。

名前の由来は、「9かける4の日に与えられた」という伝説からきているんだそうです。日本の三種の神器のように、このイコンを持つものが、正当なロシアのツァーリ(皇帝)として認められるんだとか。

作品の舞台である17世紀は、即位したばかりのピョートル大帝と、姉のソフィヤが権力争いで動乱していた時代。「9の救世主」は誰の手に渡るのか?がストーリーの鍵となっております。

なお、登場人物には、伝統的ロシア民話の人物がモチーフとして反映されているようであります。

登場人物

ドミトリー、アレクセイ、イリヤー幼馴染の三人の少年。ドミトリーは地主の息子で正直。アレクセイは司祭の子で機転が利き、イリヤーは純朴な農民。ロシア民話に出てくる三勇士をモチーフにしているようです。
バービニカ森に住んでいる、魔女みたいな婆さん。
ゼルカロフ皇女ソフィヤの側近。ソフィヤというのは、ピョートル大帝の姉です。権力争いに勝ちそうなピョートル側に寝返るため、ソフィヤが持つロマノフ家の秘宝「9の救世主」のイコンを持ちだす。
ピョートルゼルカロフに生まれた待望の一人息子。自閉症。絵の才能がある。
ワシリーサゼルカロフの親戚であるミロスラフスキー公爵の娘、ということになっているが、実は皇女ソフィヤの隠し子。ワシリーサというのは、ロシア民話で定番の女子だそうです。美しくて賢くて、魔女と対決して王子を助けたりするキャラらしい。
ヤーハゼルカロフの忠実な家来。野蛮なおっさんだが、子供くらいの身長しかない。
ジュラブリョフ秘密警察の下士官。水が大嫌いで、不自然に足が長い。名前の由来のジュラーブリというのは鶴のことです。
ラマダノフスキー秘密警察の長官。ピョートル大帝の右腕。
フロール・ブィク「銃兵隊」というロシア伝統部隊の将校。ピョートル大帝打倒クーデターの首謀者。怪力巨漢。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

ピョートル大帝 VS 姉ソフィヤの権力争いの中、秘宝「9の救世主」が紛失。

幼馴染の少年ドミトリー、アレクセイ、イリヤーの3人は、森で盗賊に襲われたっぽい母子を助けようとする。しかし馬車が川に落っこちて、ドミトリーとアレクセイだけ助かる。

実は盗賊と思ったのは、皇女ソフィヤの側近ゼルカロフだった。ゼルカロフは、ソフィヤを裏切ってピョートル大帝に取り入るため、ソフィヤの隠し子と、ロマノフ家の秘宝イコン「9の救世主」を運んでいたのだ。

結果、イコンは行方不明に。隠し子は、ゼルカロフの親戚ミロスラフスキー公爵に預けられ、ワシリーサという娘になる。そしてロシアでは権力争いの動乱が続く。

9年後、成長した少年やその他人物が再会。

ドミトリーは内乱で逮捕され、拷問されて死にそうになる。そこに、外国に逃げていたアレクセイがたまたま現れて救い出す。さらにその後、ドミトリーは森の中で、川に落ちて死んだと思っていたイリヤーに助けられる。

一方ゼルカロフは、ピョートル大帝の秘密警察で出世する。そんな中、生まれた待望の息子ピョートルは自閉症だった。しかし親戚の娘ワシリーサには、ピョートルも心を開く。

ゼルカロフは逃亡中のドミトリーを追い、ワシリーサも始末しようとする。しかしピョートルが妨害し、ワシリーサはイリヤーに助けられる。

さらに9年後、主人公たちは政権打倒の陰謀と戦う。

30代になった3少年。再び再会し、いろいろあって、3人ともゼルカロフの下で、ピョートル大帝を打倒しようとする陰謀と戦うことになる。敵国スウェーデンの密使を捕まえ、イギリスやオーストリアの支援でクーデターが計画されていることをつかむ。

ところでワシリーサはピョートルに恋しているが、ピョートルは知らん顔。そんなワシリーサに、3少年(3中年)はそろって惚れてしまう。

お互いに恋のライバルになりながら、3人はクーデター打倒のため、首謀者フロールを二重スパイに仕立てようとする。全てを操るゼルカロフは、さらに陰謀をめぐらせ、3人を利用して全権力を握ろうとするが…。

画像集

17世紀、ピョートル大帝の時代が舞台なので、その参考画像など。

強国ロシアの基礎を作ったピョートル大帝。西欧的な改革を目指し、古い考えの大貴族たちと対立。身長が2メートルもあり、大酒飲みで乱暴。まさにロシア的な大帝です。
ピョートルと権力を争った、姉のソフィヤ。結局ピョートルに負けて、修道院に幽閉されます。描いたのは、ロシアの巨匠民俗画家イリヤー・レーピンです。すごい眼力。
3人の主人公のもとになった、ロシア民話の三勇士。左からドブルィニャ・ニキーチチ、イリヤー・ムーロメツ、アリョーシャ・ポポーヴィチなんだそうです。画家ヴィクトル・ヴァスネツォフの作品。
ロシア民話によく出てくる、美しくて賢いワシリーサ。巨匠イワン・ビリービンの画。

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