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アリストノミア

アクーニン氏初の「シリアスな小説」。

「墓場の物語」と同様に、アクーニンと「チハルチシヴィリ(アクーニン氏の本名)」の共著という体裁になっております。小説の各章の合間に、なんか社会哲学的な論考が挿入されており、ここはチハルチシヴィリ名義になっています。

論考の内容は、人類を進歩させる普遍的価値は何か?とかなんとか…非常につまらないのですが、アクーニン氏もどうしたのでしょうか。

どうも近年プーチン政権に批判的で、政治的発言をしたり、いろいろ思い悩んでいるようです。読者としては、政治哲学なんかどーでもいいから、これからもファンドーリンの冒険などを書き続けてほしいものです。

題名の「アリストノミア」というのはアクーニン氏の造語で、なんか倫理的に高潔な人々を指すようですが、そのへんはつまらないので読み飛ばしております。

小説部分も、革命下のロシアで悲惨な世相の中、登場人物が人生や倫理について苦悩し、独白したり互いに議論したり、ということが中心になっております。

登場人物

アントン主人公。いろいろ人生に思い悩むタイプ。
パーシャアントン家の家政婦娘。アントンを不幸が襲った後、アントンの妻に。革命後は、婦人革命組織で出世。
マルク・コンスタンチノヴィチアントンの父。法学の教授で、かつて教え子の革命運動に連座して、シベリアに流された。肺病で命が危ない。
アズノビーシンアントン父の元同僚。内務省で出世し三等官になるが、革命で失脚、逮捕される。
ラガチョフアントン父の教え子。革命家。秘密警察で出世する。
ベルドゥイシェフアントン父の教え子。実業家。ボルシェビキに反対し、白軍に参加。
フィリップ秘密警察の下っ端エージェント。革命前も後も、政治犯をパクリまくる。
シュニッツラーチューリヒの外科医。スイスに亡命したアントンに、麻酔科医としての教育を与える。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。

少年アントンは、成長とともにロシア革命の混乱に巻き込まれる。

進歩的思想を持つ大学教授の家庭で育ったアントンは、思春期に不幸に見舞われる。しかもロシア革命が勃発。

周りの人々がボルシェビキの秘密警察にバタバタ殺され、おまけに自分も逮捕され、「人はいかにあるべきか」について思い悩む。

ボルシェビキのロシアでみんな人生めちゃくちゃ。

共産化したロシアで、吹き荒れる粛清の嵐。何とか釈放されたが、アントンの人生は崩壊。アントンと偶然出会った秘密警察のフィリップも、いろいろ苦労だらけ。過酷な時代で、人々はただ苦悩する。

父の旧友ベルドゥイシェフの助けで、アントンはスイスに亡命。そこで麻酔科医を志す。患者の姉に惚れたりするが、失恋してまた苦悩する。

アントンは再びロシアの地へ。

失恋のせいか、祖国ロシアに戻ることにしたアントン。ベルドゥイシェフを訪ね、ボルシェビキに最後の抵抗を続けるウランゲリ軍に合流する。

ソ連とは違う理想国家「第2のロシア」を夢想するアントン。しかしいろいろあって、逆にボルシェビキのラガチョフのもとに身を寄せる。

そんな中、混乱するロシアにポーランドが宣戦布告。アントンは志願して前線に行くが、そこでも地獄を見る。

内戦、対ポーランド戦争、あらゆる暴力・非道の数々を目にしたアントンは、理想社会とは何なのかを考え続ける…。

画像集

小説はロシア革命・内戦の時代を舞台にしておりますが、その参考画像など。

チェー・カー(ЧК。のちのKGB)という秘密警察の創設者、フェリックス・ジェルジンスキー。ボルシェビキの敵対者を次々に粛清。悪の代名詞のような人ですが、人柄自体は真面目で清廉潔白だったそうな。いや、そういう人が秘密警察になると一番アブナイのですよね。
白軍で最後までボルシェビキに抵抗した、ウランゲリ将軍。コサック騎兵の服装です。
ロシア革命の混乱に乗じて、侵攻してきたポーランド軍。この時は調子良かったらしいですが、後に、ヒトラーと組んだスターリンによって、ポーランドは滅ぼされます。

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