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第十巻 ダイヤモンドの馬車 第二部

ファンドーリンが忍者集団と対決する物語。

第二部は1878年の日本が舞台。外交官(副領事)として赴任してきたファンドーリンの、びっくり異文化体験や、マサとの出会いなどが描かれます。

1878年といえば、西南戦争の翌年だそうで。こんな時代の日本くんだりにやって来たヨーロッパ人は、さぞや仰天したことでありましょう。とにかく「不思議の国ニッポン」ぶりが、これでもかと描写されています。もちろん変な記述も多々あるわけですが。

そして、日本といえば忍者!なのか知らんが、怪しい術を駆使する敵の忍者集団が、あの手この手でファンドーリンに襲いかかります。むーこいつらが自害するところとか、ちょっとグロなシーンも書かれてて嫌ですな。

しかしアクーニン氏も、明治の日本や忍者について良く調べましたね。忍者集団の開祖は「百池丹波:ももちたんば」という実在の人物という設定ですが、こんな人知らんかったで。

登場人物

ファンドーリン以外の登場人物たち

マサおなじみのキャラですが、ファンドーリンとの出会いが、ついにこの巻で描かれる。横浜のヤクザ「長兵衛組」の若衆。セムシの組との抗争で敵の手中に落ちるが、ファンドーリンに救われる。以後、忠実な家来として仕えることに。
ドローニン横浜在留のロシア領事。在日本ロシア外交官のNo.2。ちなみに大使は東京にいます。
シロタロシア領事館の日本人書記官。ソフィヤに恋してしまう。ちなみに「シロタ」とロシア語で書くと、「孤児」という単語と同じ綴りになる。ということで作品でも小ネタとして触れられていますが、実際には「孤児」は「シラター」と発音するから、間違うことはないんちゃうかなー。
ブラガレーポフアヘンに溺れて身を持ち崩したロシア人船長。賭場兼アヘン窟「楽園」で謎の死を遂げる。
ソフィヤブラガレーポフの娘。父を無くして異国の地で困り果てていたところ、ファンドーリンに救われる。でもファンドーリンと恋仲にはなりません。珍しい。
ブハルツェフロシア大使館付きの海軍武官で、情報活動をしている。
ブルコックスイギリスの外交官。
オユミブルコックスの妾の日本人。「情術」の使い手で男をとりこにする。くの一忍法帖みたいですな。
ドン・ツルマキ横浜の豪商でやり手。戊辰戦争で、私兵を率いて新政府軍のために戦ったそうな。名前は「曇次郎:どんじろう」なんだそうですが、そんな名前あんのかな。
オークボ日本の内務大臣で実力者。つまり大久保利通のことなんでしょう。小説では薩摩の士族に暗殺されたことになっていますが、実際は金沢の士族に殺されたらしい。
アサガワ日本の警察官。「もと与力」で十手の達人なんだそうです。ファンドーリンを信頼し、協力してオークボ暗殺の黒幕を追求する。
ロクストン外人居留地の保安官。アメリカ西部出身の荒くれ者。
トヴィッグスイギリス人の医者。忍者に詳しい。というか詳しすぎ。
スガ日本の副警視総監(?)。
オノコージ公爵アヘン中毒の駄目男。もとは「大名」の家柄なんだそうですが、小野小路って公家の名前ですよね。
セムシ賭場兼アヘン窟「楽園」のあるじで、ヤクザの親分。このニックネームは、日本語ではNGワードちゃうかなー。
11代目モモチ・タンバ忍者集団の頭目。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。

ファンドーリンが日本へ赴任。

外交官として横浜にやって来たファンドーリン。見るもの聞くもの、驚きの連続。

副領事としての初仕事は、急死したロシア人船長ブラガレーポフの書類手続き。事情がどうも不審なので、危険を顧みず、アヘン窟「楽園」を検分に行く。そこでヤクザの抗争に巻き込まれ、たまたまマサを助ける。

オークボ大臣の暗殺計画が発覚。

ブラガレーポフの事件から、日本の実力者オークボ大臣の暗殺計画が明らかになる。ファンドーリンは、怪しい薩摩の士族グループを追跡し、忍者集団も一味らしいことが分かる。

一方、イギリス外交官ブルコックスの妾オユミと出会い、一目ぼれしてしまう。いっつもこんなんですな。

ファンドーリンはロクストン、トヴィッグス、アサガワらと捜査を進め、ついに薩摩士族のアジトを発見。警視副総監スガとともに突入する。

そんなさなか、結局オークボは暗殺され、ファンドーリンとオユミは密会を繰り返す。

暗殺の黒幕を追って、忍者の里へ。

アサガワは副総監スガが裏切ったのではないかと疑う。ファンドーリンはブルコックスを疑い、彼と決闘する羽目になる。オノコージ公爵はドン・ツルマキの関与をほのめかす。

しかし恐るべき忍者の手によって、捜査メンバーや証人は次々に暗殺される。ファンドーリンはツルマキと手を結び、忍者の里へ突入する。

夜中、単身マサと忍者の屋敷に乗り込むファンドーリン。静まりかえる邸内には、驚くべき真相が待ち構えていた…。

題名について

作中で解説されていますが、題名の「ダイヤモンドの馬車」というのは、仏教用語「金剛乗」の直訳なんだそうです。密教に関係あるらしいですが、よく知りません。

小説の中では、「罪というものはない」的な教えの仏教の奥義だ、みたいなことになっているようです。ラストのシーンで忍者がファンドーリンに解説していて、ここが作品の山場のひとつになっているようですが…いまいち何が言いたいのか分かりまへん。

東洋通の欧米人は、仏教とか好きですよね。忍者が仏教思想をそんなに重視していたのか、疑問ですがねー。

挿絵集

アクーニン作品でおなじみの、画家イーゴリ・サク―ロフ氏による挿絵がついています。しかしそのまま載せると著作権侵害なので、それを参考にして、自分で描きなおしました。下手すぎて複製には当たらないでしょう。
!(^^)!

美女くの一のオユミ。アクーニン氏の設定では「日本髪を結っているがドレスは洋風」となっていますが、そんな変な格好するわけないやろ!ということで、普通の和服にしました。
横浜の富豪ドン・ツルマキ。トルコ帽をかぶっていますが日本人。
イギリス公使のブルコックス。血の気が多い。

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