アクーニン氏が「アンナ・ボリソワ」という女性名で発表した第三作。
タイトルの「vremena goda :ヴレメナー・ゴーダ」というのは、ロシア語で「四季」という意味ですが、小説の舞台となる、フランスのロシア人向け老人ホームの名前でもあります。
とにかく長いのですが、ストーリーの中心は、寝たきり老女アレクサンドリーナの人生回想。
そこに、アルツハイマーとか自閉症とか、意識はあれど動けない「ロックインシンドローム」とか、痴呆の医学ネタが織り込まれております。
アレクサンドリーナ(”マダム”) | 老人ホーム「ヴレメナー・ゴーダ」で寝たきりのロシア女性。1905年生まれの105歳。数奇の人生を経て、アルツハイマーの研究者となり、療養施設「ヴレメナー・ゴーダ」を開設したが、今は自分も患者になっている。周囲には意識が無いと思われているが、実は意識があり、自分の波乱の生涯についてずっと回想している。 |
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ダヴィド | アレクサンドリーナが、生涯ずっと恋した金持ち美男。ユダヤ系ロシア人。 |
ヴァン・イン(イワン・イワーノヴィチ) | アレクサンドリーナが1932年に出会った、盲目の中国人。当時99歳。盗賊に誘拐されたダヴィドを救うため、アレクサンドリーナに協力する。 |
サブロフ | 同じく1932年の人物。満州で活動する、日本の関東軍の情報将校。名前がサブローなので、それをロシア風にもじってサブロフと呼ばれている。 |
ヴェラ | 老人ホーム「ヴレメナー・ゴーダ」で研修中の看護師。若美女だが、脳の動脈瘤で、いつ突然死するか分からない運命。 |
ベルジン | ヴェラと共に、ロシアで介護老人ホーム事業を進める実業家。 |
ムーハ | ベルジンの父。記憶障害で「ヴレメナー・ゴーダ」に入居している。 |
シャルパンチエ | 「ヴレメナー・ゴーダ」の所長の医師。 |
ワルダ | 「ヴレメナー・ゴーダ」に勤務するセクシー看護婦。 |
”マングース” | アレクサンドリーナと共に「ヴレメナー・ゴーダ」を開設した人物。 |
エムエン | 寝たきりのアレクサンドリーナにずっと付き添っている自閉症おやじ。 |
ネタバレにならない程度に解説。
105歳で寝たきりのアレクサンドリーナは、過去を回想する。ロシア帝政末期の少女時代、美青年ダヴィドに恋するが、革命の混乱で、ダヴィドは引っ越してしまう。
1930年代の満州。アレクサンドリーナはダヴィドと再会。しかし、金持ち息子のダヴィドは、盗賊に誘拐される。身代金を用意するため、アレクサンドリーナは謎の老人ヴァン・インと奔走する。
1941年。フランスでのダヴィドとの幸せな生活…も長く続かず、フランスはナチスドイツに征服され、ユダヤ人のダヴィドに危険が迫る。
そしてその後。アレクサンドリーナはアンチエイジングの研究者となり、フランスに療養施設「ヴレメナー・ゴーダ」を開設。数奇な人生の過程で見つけた大発見を、世界に向けて発表しようとするが…。