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第一巻 アルティン・タラバス

ニコラスシリーズの第一作。歴史を研究する主人公が、17世紀の先祖が残した遺言書を調査するうち、歴史的な財宝をめぐる陰謀と冒険に巻き込まれます。

一章ごとに、ニコラスが活躍する現代と、先祖のコルネリウスが活躍する17世紀のロシアが、交互に描かれます。

二つの時代をつなぐのは、コルネリウスが残した遺言書。ニコラスとコルネリウスは、それぞれの時代で「イワン雷帝の図書館」に眠る財宝を追い求め、ともに意外な結末に遭遇します。

題名の「アルティン・タラバス」というのは、モンゴルのハーンたちが貴重品を保管した、防水のトランクみたいなものだそうです。コルネリウスと仲間のヘル・ヴァリゼルが、見つけた宝を入れるために、それと同じものを用意したことになっています。

「タラバス」ちゅうのは何のことか不明ですが、「アルティン」はタタール語で「金」の意味だそうな。現代の章に登場する、女性キャラの名前にもなっております。

登場人物

ニコラス以外の登場人物たち。

現代の登場人物

アルティン・ママエヴァ「テレスコープ」誌の下っ端ジャーナリストで、タタール系の娘。取材中に、ニコラスの危機を助ける。全く笑わないツンデレ系。アルティンというのは、もともとタタール語で「金」のことだそうな。
シューリク眼鏡をかけた殺し屋。ニコラスをつけ狙う。
ブラート・ソロビヨフ半分ギャングみたいな、やりての実業家。
"ソソ"・ガブーニヤグルジアマフィア出身の銀行家。ライバルマフィア「白髪」に追われるニコラスをかくまう。
セルゲーエフソソの部下でセキュリティ部長。もと治安部隊の大佐。
ヴェルシーニンモスクワ公文書館の所長。
バラトニコフ公文書館の職員。
ミスター・パンプキン在モスクワ英国大使館の職員。保安担当。

17世紀の登場人物

コルネリウス・フォン・ドールンドイツ・シュヴァーベン地方出身の軍人。嘘っぱちの高待遇に騙されて、ロシア皇帝(ツァーリ)に仕えるため、モスクワにやって来る。ロシアのファンドーリン一族の始祖。「フォン・ドールン」というのがなまって、やがて「ファンドーリン」という苗字になったのです。
アレクセイ・ミハイロヴィチ実在のロシア皇帝。ロマノフ朝の二代目で、有名なピョートル大帝の親父です。
アルタモン・マトフェーエフアレクセイ皇帝の高官。マトヴェーエフという実在の宰相がモデル。
イワン・アルタモノヴィチマトフェーエフの執事で、アフリカ出身。
アレクサンドラマトフェーエフの娘。若くて美女。
ガリツキー公爵アレクサンドラの婚約者的な貴族。若くて美男で金持ちで有力者。
ヘル・ヴァリゼルドイツ人の医師で学者。無神論者。
タイーシイギリシャ出身の聖職者。
イオシフタイーシイの忠実な部下。
リベナウ=フォン・リリエンクラウコルネリウスの元上官。マスケット銃隊の指揮官。

ストーリー

ネタバレにならない程度に解説。この作品は日本語訳が出ていませんが、英訳があるので、結末はそちらでご確認ください。

先祖の遺言書を研究するため、ニコラスはロシアへ。

ニコラスが受け継いだ先祖コルネリウスの遺言書は半分欠けていたが、残りの半分がロシアで発見された。謎の手紙でそのことを知ったニコラスは、初めて一族の祖国ロシア・モスクワを訪れる。

公文書館で、遺言書の完全版テキストを入手した。しかしその後、なぜか殺し屋シューリクに執拗につけ狙われる。

危機一髪のところを、ジャーナリストのアルティンや、富豪のソロビヨフに救われる。どうも遺言書が全ての原因らしい。解読すると、そこには伝説の財宝「イワン雷帝の図書館」の探し方が記されていた。

自力で解決しようと決意したニコラスは、黒幕の一人と思われる、ギャングのソソに会う。彼の庇護のもと、文書館の学者バラトニコフと協力し、モスクワのどこかに眠る「図書館」を発掘しようとする。

時は変わって17世紀では、ファンドーリン家の始祖コルネリウスがロシアへ。

ドイツ人のコルネリウスは、うまい話に騙されて、ロシアのツァーリの軍隊に仕えるため、モスクワにやって来る。来てみれば、汚くて野蛮なことばかり。

しかし故郷には帰してもらえず、しかたなく頑張ったところ、宰相のマトフェーエフに見出される。出世し、マトフェーエフの娘のアレクサンドラに惚れたりする。

ある時、コルネリウスは、暴漢に襲われた医師ヘル・ヴァリゼルを助ける。ヴァリゼルは、コルネリウスの人柄を見込んで、秘密を打ち明ける。

ビザンチン帝国から伝わった、貴重な書籍のコレクション「イワン雷帝の図書館」が、モスクワのどこかにあるのだという。

ヴァリゼルは、自分はその中の「ザマレーイ」だけが欲しいので、残りはコルネリウスに譲るという。二人は協力して、宝の図書館を探す。

そんな中、コルネリウスも絡んだ事件により、アレクセイ皇帝が危篤に。マトフェーエフは権力闘争に敗れ、コルネリウスにも危険が迫る。

コルネリウスとニコラスの冒険は、時を超えた結末へ。

それぞれの時代で「図書館」を探す二人。コルネリウスは、ヘル・ヴァリゼルから、「ザマレーイ」の驚くべき秘密を聞かされる。一方ニコラスは、発掘現場で、ボロボロになった本の装飾枠を見つける。

これが「図書館」の正体なのか?はたして、先祖コルネリウスが遺言書で伝えたかったこととは…?

画像集

参考画像など。

ロマノフ朝二代目の皇帝(ツァーリ)、アレクセイ・ミハイロヴィチ。ヨーロッパ諸国を手本に、いろいろな改革をしたらしい。
マトフェーエフのモデルになった、実在の人物アルタモン・マトヴェーエフ。アレクセイ帝の死後失脚して、極北に流される。のちモスクワに戻るが、1682年の銃兵隊の反乱で殺害された。
17世紀半ばのモスクワ・赤の広場。ドイツからやって来たコルネリウスにとっては、おそろしく不潔で野蛮な都市。
ちっこくて見にくすぎますが、17世紀のマスケット銃兵と槍兵。コルネリウスも、こんな扮装だったんでしょうか。

謎のカギを握る「コルネリウスの遺言書」

全ての発端となった「コルネリウス・フォン・ドールンの遺言書」は、全文を掲載すると、以下のとおりです。1682年に書かれたという設定。(写真は、その遺言書。ホントに17世紀に書かれたみたいで、雰囲気でてますね~)

息子ミキータのために記す。もし物心ついた時に、我がすでに亡く、神がモスクワへ帰ることを許したまわぬ時のために。

もし求めるものが分からず、たどり着けなければ、それは悪魔の誘惑を避けんがための、神のおぼしめしである。もしたどり着いたならば、神かけて、アルティン・タラバスの下の「ライブラリー」だけを取れ。藁に包まれたザマレーイには、魂の救済のため、触れてはいけない。

スコラドムから、「石の門」を抜け「黒い村」に沿って、父祖の地「巌のテオ城」から「公爵の館」の向きにあたる方向へ、230サジェンの距離を行け。そこに、偉大なる先祖フーゴの娘の数と同じだけ窓の開いた、木造の家がある。

家が焼失していても、心配はいらない。地下の物置は、頑丈にできている。地下に降り、北東の角へ行け。そこに薄い石の敷き板があるから、それをどけて、下にある、輪のついた鉄鎖を引け。そうすれば、土の床の隠し部屋が見つかるだろう。

隠し部屋に降りる前には、我らが主イエス・キリストに祈れ。死者の骨は恐れるな。そして、神かけて好奇心に屈することなく、ザマレーイには決して触れてはいけない。

父の遺志に背いてはいけない。さもなくば、己と人類全てに、悪をなすことになるだろう。本をどけて、***(文字欠落)。

このように、イワンのライブラリーを見つけられるだろう。汝に神の祝福あれ。クロメシュニキにて、190の年の5月3日に記す。コルネイ・フォンドールン 印

さて、ニコラスは謎を解き、「ライブラリー」を手にできるのか?そして、「絶対に触るな」とうるさく書かれた「ザマレーイ」とは何なのか…?

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