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第二巻で、いろいろ疲れて遠くに行きたくなったファンドーリン。外交官として日本に赴任することになります。で、東洋へ向かう豪華客船レヴィアタン号の船上で、またまた事件に巻き込まれるのが、この作品。
豪華客船というある種の密室で、容疑者が何人もいてそれぞれのドラマがある、という構成。それぞれの登場人物の視点で、事件を多面的に描くなど、語り口も工夫されています。
途中までは謎が謎を呼ぶ感じですが、その割にラストは、たいしたひねりも無く終わってしまう感があります。
さらに、容疑者の一人が日本人でアオノ・ギンタローというのですが、この人物の描写が…かなりトンデモでして。やや興ざめの感あり。アクーニン氏のような外国人が、明治時代の日本人を描いたにしては、がんばっている方でしょうが…。あとロシア人読者向けに、誇張している点もあるでしょう。
この作品は珍しく邦訳がありますので、そちらをどうぞ。(『リバイアサン号殺人事件』沼野恭子訳 岩波書店 2007) 次の第四巻とシリーズ仕立てです。たぶん、もともとは続編を順次刊行する予定だったのでしょうが、おそらく売れないため、岩波から出た翻訳はまだ二冊だけという状態。
ファンドーリン以外の登場人物たち
ゴーシュ警部 | パリ市警の警部。 |
---|---|
レジナルド・ミルフォード=ストークス | イギリスの貴族。 |
レナータ・クレーバー | スイスの銀行家婦人で妊婦。 |
クラリッサ・スタンプ | イギリス女性。 |
アオノ・ギンタロー | 日本人。フランスの陸軍士官学校(サン・シール)に留学した帰りという。 |
マリー・サンフォン | 悪名高き女詐欺師。 |
レニエ | レヴィアタン号の一等航海士。 |
スウィートチャイルド教授 | インド考古学の研究者。 |
日本語版があるので、まあそちらを読んでください。
パリで富豪が使用人もろとも惨殺された。パリ市警のゴーシュ警部は、現場の遺留品から、犯人を追って豪華客船レヴィアタン号に潜入する。
エジプトからインドへ向かうレヴィアタン号の船上で、ゴーシュ警部は容疑者を5人に絞る。イギリスの風変わりな貴族、銀行家の妻とイギリス女性、怪しい日本人、そしてロシアの外交官。果たして犯人は誰なのか?そして犯行の目的は…?
第二巻では憂鬱の底に沈んでいたファンドーリンですが、この巻では少し元気になったようですね。ただ、この巻は5人の人物(ゴーシュ、クレーバー、ミルフォード=ストークス、スタンプ、アオノ)の視点でバラバラに描かれているため、ファンドーリンが何を考えているのかよく分かりません。
最後の方でファンドーリンが、ミルフォード=ストークスに「私も過去のつらい体験を乗り越えた」と言っているので、第一巻の事件からはもう立ち直った、ということなのでしょう。
ロシアが舞台じゃないので個人的には興味のない巻ですが、全体のシリーズとしては、ちょっと毛色が変わって良いアクセントになっていると思います。